大阪難波(なんば)のど真ん中にある戎橋筋(えびすばしすじ)商店街には、関西の老若男女に愛されているアイスキャンデーの名店、北極があります。
北極のアイスキャンデーは創業当時から変わらず職人の手作業でひとつひとつ丁寧に作られており、こだわり抜いた味わいは各メディアや口コミなどにより、大阪名物として国内外に広く知られるようになりました。
ここでは北極の紹介に始まり、アイスキャンデーへのこだわりや、季節限定商品などアイスキャンデー以外の商品も紹介していきます。最後までお読みいただき、お楽しみいただければ幸いです。
アイスキャンデーの北極とは
大阪の難波(なんば)にある戎橋筋(えびすばしすじ)商店街に本店を構える北極は、テイクアウトのアイスキャンデーに加え、和スイーツのカフェを展開しています。
初代社長の志村秀三氏が1945(昭和20)年に創業し、2020年で75年目を迎える老舗です。終戦直後の難波・戎橋周辺には食品販売店はほとんどなく、そんな中で「せめて、子どもたちや女性にだけでも冷たくて美味しいアイスキャンデーを届けたい」という想いからアイスキャンデーの製造販売を始めました。
当時ラーメン1杯20円という値段に対し、アイスキャンデーも1本20円と高価であるにも関わらず瞬く間に売れて、お店には長蛇の列ができたそうです。現在も変わらず、一つ一つ手作りにこだわり、創業当時から愛されている味を守り続けています。
印象深い北極のアイスキャンデーのCM
北極のアイスキャンデーがさらに人気になったのは、1953(昭和28)年に関西ローカルにて放送開始されたテレビCMがきっかけです。
大阪府出身のアニメーター故・中邨靖夫(なかむらやすお)さんにアニメCM制作を依頼。当時としては破格の制作費1千万円以上をかけて作られました。テレビ放送が始まったばかりで動画CMがもの珍しかったという時代背景と、CMソングのフレーズ「北極のアイスキャンデー♪」のメロディやリズムが視聴者の印象に残り、関西人にとって「北極=アイスキャンデー」というイメージが浸透しました。
CMの宣伝効果もあり、1955〜75年頃(昭和30〜40年代)には多い時で1日にアイスキャンデー3〜4万本を売り上げ、持ち帰り用のドライアイスを1トン消費するほどの繁盛ぶりでした。
1日の製造量が2万本だったため生産が追いつかず、夜を徹して作り続けるなか「凍っていなくてもいいから売ってくれ」というお客様の声もあったとか。ドライアイスを食品の保冷として取り入れたのもおそらく日本で最初だそうで、注文の度に木づちでドライアイスを割る音は戎橋筋商店街周辺の夏の風物詩となりました。
今では「北極といえばアイスキャンデー」として関西を中心にとても有名ですが、テレビCM制作をきっかけに生まれたペンギンのマスコットキャラクターもおなじみの存在になっています。店内にはペンギンの家系図が掲げられており、現在は公募により名付けられた三代目ペンギンマスコットの「エビスくん」と「ミナミちゃん」がアイスキャンデーを手にした姿でお店の看板やショーケース、化粧箱やパッケージに描かれており、来店するお客様をお迎えしています。
時代の流れに沿って進化を続ける
1955(昭和30)年には新しくビルを建て、間接照明や自動ドアなど今では当たり前の設備をいち早く取り入れました。この頃は、甘味喫茶としても営業しており、新店舗開店を記念して吉本興業所属のかしまし娘さんを招き、ネタを披露してもらったそうです。また店内には100インチ以上もある巨大なカラーテレビも設置しました。一般家庭へのテレビ普及率がまだまだ低かった時代、プロレスや相撲などの人気番組が中継される時間帯になると、視聴目当てのお客様で店内は満席、立ち見が出るほどの盛況ぶりだったそうです。
このように戦後からの長い歴史を持つ北極は、創業から続くアイスキャンデーの味を守りながらも、時代の流れを読み柔軟に取り入れるという姿勢で営業を続けています。この姿勢は二代目社長の久保田光惠氏にも受け継がれています。
「今まで長きに渡り北極のアイスキャンデーを愛してくれたお客様の信頼を損ねないように、昔ながらの製法を守りながら『安心で』『美味しくて』『低価格の』アイスキャンデーを作り続けています。なかなか厳しいところもありますがこれは私の使命だと考えています。またそこに留まることなく『体に優しく美味しいモノづくり』をモットーにお客様の声に耳を傾け、新商品の開発にも日夜取り組んでいます。取材を受けたりメディアに出たりといつもフットワーク軽くありたいですし、何かに挑戦しているのが好きなんです。」
近年では2019(令和元)年にミニタオルにわりばしを挿しアイスキャンデーを模した「北極アイスキャンデーミニタオル」を中川政七商店とのコラボ限定商品として販売したり、2020(令和2)年にはYouTube限定のCMを製作したりと、北極のアイスキャンデーをさらに広めるべく様々な形で意欲的に挑戦され続けています。
では次に北極の代名詞、アイスキャンデーへのこだわりについて製法や材料など紹介していきます。
和スイーツカフェがオープン
2023年4月からは、店内2階にカフェをオープン。和スイーツをコンセプトに、京都小川珈琲の豆を使用したこだわりコーヒーや、昭和レトロを感じられる大人のクリームソーダなどのメニューが並びます。
カフェのコーヒーは有田焼のフィルターで一杯ずつ丁寧に入れることにより、旨みや香りをしっかりと抽出。コーヒー豆本来の香りが鼻に抜け、至福のひとときを味わえます。
大人のクリームソーダは、昭和レトロを感じる懐かしい味わいと、おしゃれな見た目が魅力です。
ストロベリー、ココナッツ、ブルーオレンジ、巨峰の4種類のフレーバーがあり、どれも甘すぎず、さっぱりとした味わい。(2023年9月現在)
爽やかな炭酸の刺激と北極のアイスクリームが乗った大人のクリームソーダを、ぜひお試しください。
ほかにも自家製あんを使用したクリームあんみつや、ふわふわの氷で仕上げたかき氷など、さまざまな和スイーツが味わえます。
カフェの2階には8席、3階にはゆったり座れるソファー席が12席あります。
落ち着いた雰囲気の店内で、北極のドリンクやスイーツを心ゆくまで堪能してみませんか?
アイスキャンデーのこだわり
北極では「北極にしか出せない昔から変わらぬ味」にこだわり、大量生産が可能な機械化を行わず今でも職人による手作業で、一本一本丁寧にアイスキャンデーを作っています。
北極のアイスキャンデーの特徴といえば「斜めに刺さった棒」ですが、一つ一つ位置を調整しながら手作業で挿し込まれています。材料に人工物を一切使用していないため溶けると棒から落ちやすいのですが、このように職人の手で斜めに刺すことで溶け始めたアイスキャンデーが落ちにくくなり、最後まで食べやすいという効果があります。
キャンデー棒は抗菌作用のあるヒノキ、スギ(奈良県吉野産)の間伐材を使用し、さらにその中でも利用度の少ない部位を使っているので自然環境にも配慮しています。
口に含んだときの香りがやわらかくアイスの風味を邪魔しません。
砂糖は和菓子作りによく用いられる白双糖(しろざらとう、「白ザラメ」とも呼ぶ)を使用しています。高価な砂糖ですが、のど越しが良く後味がさっぱりするため昔からこの砂糖が使われています。あずきは北海道十勝産を使用し、専用の特注釜で豆がつぶれないようその都度調整しながら炊き上げられています。
こうして出来上がったアイスの原液は丁寧にかき混ぜられつつアイスの型に流し込まれます。豆などの固形材料が均一に型に入るようにするためです。
冷凍する際には、今では液体窒素を使った瞬間冷凍が主流ですが、北極ではマイナス24度で約2時間、ゆっくり冷凍する方法をとっています。こうするとしっかり凍っているのに固すぎないという北極にしか出せない食感が生まれます。
これら手間暇を惜しまない独自の製法や選び抜かれた食材から、北極のアイスキャンデーに対するこだわりが随所にうかがえます。
売れ筋商品ランキング
こだわり抜いて出来た北極のアイスキャンデーは現在、全部で9種類。
・ミックスジュース 210円(税込)
・ミルク 190円(税込)
・抹茶 190円(税込)
・あずき 190円(税込)
・ココア 190円(税込)
・パイン 190円(税込)
・イチゴ 190円(税込)
・オレンジ 190円(税込)
数ある種類のなかで1番人気は「ミルク」です。材料にたっぷり練乳を使い、大人から子どもまで万人に愛される味わいです。
次いで「あずき」です。先にも述べたようにこだわり抜いて炊き上げられたあずきから作られていますが「他のあずきアイスと食べ比べてもやっぱり北極のあずきが一番だ」といって買っていくお客様が多いとか。「ミルク」と合わせて不動のポジションだそうです。
3番人気は「パイン」です。2022年にバージョンアップしたパインは、ゴールデンパイン種を使用。甘味がアップし、さらに人気が高まりました。
店頭で迷う方も創業当初からあるこの3つを選ぶそうです。
また「あずき」「パイン」「オレンジ」の3種類は乳製品を使っておらず、乳アレルギーの方にも安心して食べられます。
ちなみに関西にゆかりのある芸能人の方たちにも北極のアイスキャンデーは人気です。
例えば日本を代表するロックバンド・ラルクアンシエルのリーダーでベース担当のテツヤさんは「オレンジ」が好きだそうで、イナズマロックフェスに出演の際の物販として使用したいと依頼があり受けたというエピソードがあります。
社長おすすめの大人の楽しみ方
北極のアイスキャンデーには、社長がおすすめする大人の楽しみ方があります。それは「ミルク」と赤ワイン、「パイン」「オレンジ」とハイボールなど、アイスキャンデーとお酒を組み合わせていただく食べ方です。作り方は簡単で、お酒をグラスに注ぎ、アイスキャンデーを刺すだけ。アイスキャンデーでお酒をかき混ぜ、溶かしながらいただきます。通販では「ハイボールセット」と銘打って「パイン」と「オレンジ」のセット商品も販売されています。
また「あずき」を煮溶かしてお汁粉としていただくお客様もいるそうです。材料に人工物を使用しない北極のアイスキャンデーだからこそできるアレンジですが、これなら寒い季節に温かいスイーツとして楽しむこともできます。
知る人ぞ知る季節限定商品
アイスキャンデーで有名な北極ですが、実は知る人ぞ知る季節限定商品も販売されています。
それは万人に愛される商品として選ばれた「回転焼き」です。その年の気温などにもよりますが、毎年9月末頃~翌4月末頃にかけて売り出されます。
店頭で焼かれており、寒い時期の北極「裏」名物と言っても過言ではありません。通販はなく店頭のみの取り扱いで、種類は3種類「つぶあん」「カスタード」「クリームチーズ」があります。
「回転焼き」の表面にはマスコットキャラクターのペンギンの焼き印が押してあり、味の違いが分かるように種類の文字も入っています。とても愛らしく、一目で北極の商品だと分かる仕上がりになっています。なかには餡がたっぷり入っていて食べ応えがあり、小腹が空いたときにおすすめです。手土産としても重宝します。
北極ではアイスキャンデーだけではなくカップアイスも販売しています。全部で4種類です。
・マンゴー 350円(税込)
・ミルク 350円(税込)
・日向夏 350円(税込)
・大阪名物ミックスジュース 380円
「アイスキャンデーの「ミルク」味をカップアイスでも」という思いから生まれたカップアイスのミルクは創業当初からある商品で、味わいはあっさりしたアイスキャンデーのミルクをそのままに、きめ細やかな雪を固めたような、アイスキャンデーとは一味違った食感で楽しめます。
「マンゴー」「日向夏」は2009年に公開された映画「南極料理人」とのコラボ商品として誕生しました。映画会社からアイス製作の依頼が来た際に、主演を務めた俳優の堺雅人さんが宮崎県出身ということから、宮崎県名産品のマンゴーと日向夏を採用しました。公開中は映画館にて販売され、公開後の今も定番のカップアイスとして販売されています。
「ミックスジュース」はアイスキャンデー「ミックスジュース」が出来た翌年にカップアイスとして売り出されました。
この他に、今は販売を休止していますが、2018年まで販売していた焼きドーナツの「ペンギンリング」、創業70周年を記念して作った「缶入り飴」がありました。
「ペンギンリング」はパイ生地にあずきやチョコ、カスタードを包み、ホットサンドのように専用の焼きドーナツ機で挟んで焼いたデニッシュドーナツです。大阪府八尾(やお)市の西武百貨店から「1年通して販売できる商品を企画してほしい」という依頼から生まれた商品で、その当時八尾市出身の演歌歌手天童よしみさんがたまたま食べて気に入られたそうで、のちに大量注文し、テレビなどのメディアで紹介していたという逸話があります。
「缶入り飴」は創業70周年を迎えたときに記念に作った商品で、筒状の缶は昔円筒形だったアイスキャンデーを模して作られました。味は創業当初からの「ミルク」「あずき」「パイン」を採用しました。
具体的な再開の予定はないものの、いつでも作れる状態にはあるとのことでしたので、またいつの日か店頭で見かける日が来るかもしれません。
オリジナルグッズ
北極のオリジナルグッズも人気です。
アイスキャンデーを持ち帰るのに最適なショッピングバッグ。プレゼントとしてアイスキャンデーを入れて贈るのはもちろん、普段使いとしても便利な「保冷バッグ」770円(税込)は、青地にお店のマスコットである可愛いペンギンのキャラクターが白色であしらわれています。店頭・通販のいずれでも取り扱いがあり、バッグのみでも購入することが出来ます。
また、「保冷バッグ」は、店頭販売でお買い上げの場合、金額に応じて少しお安くなります。1500円以上で660円(税込)、3000円以上で550円(税込)、4500円以上で440円(税込)になります。
・Tシャツ2500円(税込)
・ミニチュアアイス400円(税込)
他には創業当初から販売されている「灰皿」500円(税込)、「湯のみ」500円(税込)に「半袖Tシャツ」1900円(税込)や「ペンギンストラップ、キーホルダー」各300円(税込)など本店でしか手に入らない商品も販売されています。
通販保冷バッグ(北極公式ホームページ)
湯呑み(北極公式ホームページ)
北極のアイスキャンデー販売場所
北極は大阪難波にある戎橋筋(えびすばしすじ)商店街の中にあります。
他には百貨店などの商業施設で催事として夏場を中心に臨時出店されています。
催事の情報は北極ホームページや北極インスタグラムで確認できます。
北極公式ホームページ
北極公式インスタグラム
お土産としてお持ち帰りも可能です。
北極のアイスキャンデーは、6本以上購入で1時間分の保冷剤が無料で付属します。持ち歩きに1時間以上かかる場合は、有料の保冷剤70円/1時間(税込)を追加できます。
アイスキャンデーの購入が6本以下のときは、ウレタン製の袋に入れてもらえます。(持ち運び時間の目安は20分)
アイスキャンデー、カップアイス、オリジナルグッズの保冷バッグや湯呑みは、通販でも購入できます。売れ筋商品は「おまかせ20本セット」3400円(税込、送料別)や「ファミリーセット(30本入り)」5160円(税込、送料別)。もちろんバラ売りでも販売されています。
またアイスキャンデーの工場が兵庫県三田(さんだ)市にあることから兵庫・三田のふるさと納税の返礼品として北極のアイスキャンデー2020年10月から選ぶことが出来るようになりました。さとふるや楽天などふるさと納税を取り扱うサイトで利用できます。
店舗情報
店名/北極
住所/大阪市中央区難波3-8-22
電話番号/06-6641-3731
営業時間/日曜日 10:00-20:00
月〜木曜日 11:00-20:00
金曜日 11:00-21:00
土曜日 10:00-21:00
定休日/元旦のみ
支払い方法/現金、PayPay、LINEPay、auPay、ウィーチャットペイ
アクセス
大阪メトロ御堂筋線「なんば」駅 1番口より 徒歩約2分
大阪メトロ千日前線「なんば」駅 20番口より 徒歩約4分
近鉄・阪神電鉄「大阪難波」駅 12番口より 徒歩約4分
南海電鉄「なんば」駅 中央口より 徒歩約5分
「NAMBAなんなん」E3出口から出ると、左手に戎橋筋商店街南側入り口(髙島屋の向かい)があります。
そこから商店街に入り約60m、徒歩1分ほどで左に北極があります。
なんばマルイの隣に位置するので、雨の日などは地下からなんばマルイから地上へ上がると雨に濡れずにお店に行くことが出来ます。
まとめ
関西で親しまれ続ける北極のアイスキャンデーは、大阪名物の一つです。
75年に渡る歴史を持ち、創業当初からのお客様だと4世代にもわたって魅了し続ける老舗の味は、昔ながらの製法からシンプルながらも懐かしさを感じる半面、こだわった食材から「高級和菓子」とも称され、大阪をはじめ関西の人々はもちろん、今や全国や海外からも足を運ばれる名店となりました。
大阪の定番手土産としての地位も確立し、今ではアイスキャンデーだけにとどまらず、季節商品の回転焼きやその他のオリジナル商品など1年を通して楽しめるお店へと発展しています。
名店の味をぜひ一度ご賞味ください。
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大阪在住フリーライター。 取材・インタビュー記事、SEO記事など幅広くジャンルレスに執筆しています。 趣味は写真を撮ること。動物と高校野球が好き。