セミの大合唱から鈴虫の音色に。秋ですね。

こだわりのコーヒーが味わえる大阪老舗の名店「純喫茶アメリカン」

休みの日や仕事の合間に、気分転換がしたくて喫茶店にいく方も多いのではないでしょうか?
全国展開するチェーン店や、SNS映えするメニューや内装が人気のトレンドを抑えたカフェなど、日々、多種多様なお店がオープンしていますが、日本でいちばん喫茶店が多い大阪には、昔ながらの風情が残る老舗がたくさんあります。

そのなかでも今回は、大阪の定番観光スポットとして有名なグリコの看板からほど近い千日前商店街にある、2021年で創業75年をむかえる老舗「純喫茶アメリカン」をご紹介します。
創業時から変わらないこだわりのたくさん詰まったメニューや温かいおもてなしで、昔から地元の方を始め、旅行者や多くの芸能人に愛され続けています。

この記事では、そんな「純喫茶アメリカン」のおすすめメニューをはじめ、今ではもう再現することもできない貴重なインテリアや創業者から引き継がれる商売への思いなどを三代目店主である山野陸子さん、誠子さんにお伺いしました。

コーヒー好きな方、純喫茶ファンの方に是非訪れていただきたい名店です。最後までチェックしてくださいね。

目次

貴重な装飾品でデザインされた美しい店内

純喫茶アメリカン 外観

2021年で創業75年を迎える「純喫茶アメリカン」は、地元の方をはじめ全国にも熱烈なファンが多い、大阪屈指の老舗純喫茶です。

純喫茶アメリカン

店内に入ってまず目に入るのが、この豪華なシャンデリアと螺旋階段です。

長い歴史のなかで何度か改装をされていますが、「上質な空間で特別な時間を過ごして欲しい」という思いから、お店の儲けを注ぎ込んだ特注品ばかりで作られています。

例えば上記写真の螺旋階段は、ビルを改装した1963(昭和38)年に設けられました。
現在のようにコンピューターがなかった時代なので、この美しい曲線をつくるのはとてもむずかしく、石大工さんに2回頼んだけれど断られたというエピソードもあるほどです。
なんとか依頼を引き受けてくれたものの、倍以上の大きさの石から手作業で階段を削り出し、この空間にはめ込むには大変な苦労があったのだとか。

インテリアのひとつひとつにおもてなしの心がつまった、古き良き昭和の雰囲気を残す店内は、年配の方には懐かしく感じられ、昭和になじみのない若い方には新鮮に感じられるとあって、老若男女問わず幅広い方が来店されます。

純喫茶アメリカン 座席

客席は1階と2階にフロアがあり、特注品の座り心地の良いソファーがあります。

1階フロアの各席には店主さんが心を込めて活けている季節の美しい生花があります。
意図されていなかったそうですが、建築士の方から「暖房などによる乾燥を防いでくれる効果もある」と言われたそうです。

土・日曜日にお客さんが多いことと、花の市場との兼ね合いもあり、金曜日に全ての花を入れ換えているそうです。

純喫茶アメリカン 店内

輝くシャンデリアを真横に眺めながら螺旋階段を登って2階フロアに行くと、1階とはまた違った雰囲気の空間が広がっています。

純喫茶アメリカン

千日前商店街を眺めながらコーヒーが飲める窓際の席や、川島織物製の立派な緞通(だんつう)が飾られた壁や絵画を鑑賞しながら、ゆっくりとした時間を過ごすことができるなど落ち着いた雰囲気が魅力です。

職人技が光る唯一無二のインテリア

つくられた当時のトレンドが感じられるような豪華な装飾や内装は、今ではもう造ることのできない貴重なものも多くあります。

純喫茶アメリカン 衝立

客席を仕切る衝立(スクリーン)は、本物の貝殻を職人さんが一枚ずつ手作業で貼られたものです。
同じ大きさの貝殻を集め揃えることがむずかしく、また現在では同じように造ることができる職人さんがいないため、修理することもできない貴重な装飾品です。

純喫茶アメリカン 壁

1階フロアの左側にあるひときわ目をひく木製の壁は、ブナの木やマホガニーなど種類の違う高級木材を職人さんがカンナを使って手作業で削り出し、幅1cmに整えたものを640枚組み合わせています。

曲線が生み出す木の光沢とステンドグラスがとても美しいこちらの壁は、素晴らしい調度品です。なんと、1975(昭和50)年当時の家一軒分の費用がかかったそうです。

純喫茶アメリカン 大理石

エレベーター部分に使用されている赤い大理石はイタリア原産のもので、今では手に入れられない貴重な逸品です。

純喫茶アメリカン 照明

天井からはお花の形の照明が、空間を華やかに照らしています。

内装のデザインは、初代店主の「明るいお店にしたい」という思いをもとに、設計士の方と様々なプランを練り、歴史的建築を手がける株式会社内外テクノスに施工をお願いし、実現したそうです。

純喫茶アメリカン

こうした美しい内装は建築物としても評価され、たくさんの栄えある賞を受賞しました。
大阪市が主催する「生きた建築ミュージアム」という文化イベントにも選出されています。歴史的な建築から最新技術を用いた現代の超高層ビルまで大阪を象徴する建築を巡り、その素晴らしさとそれを支える人々に触れることで、大阪という都市そのものの魅力を感じることができる名誉あるイベントです。

参考/生きた建築ミュージアム・大阪セレクション

お客様への思いやこだわりがつまった唯一無二の空間を気に入っている方も多く、常連さんに改装を伝えると「そこの壁は残してほしい」など要望を言われることもあるのだとか。
こうしたエピソードからも、純喫茶アメリカンが長年愛され続ける理由を知ることができます。

これだけ素晴らしい内装なので「写真を撮りたい」という方も少なくありません。店内は撮影禁止ではありませんが、ゆっくりと快適に過ごされている他の方にカメラを向けないよう、撮影時には写りこみなどご配慮くださいね。

純喫茶ならではのメニュー

7種類の豆をブレンドしたこだわりのコーヒー

純喫茶アメリカン コーヒー

(ホットコーヒー・アイスコーヒー  570円)

純喫茶アメリカンのコーヒーは、大阪の昔ながらの味に近くなるように作られているので、香ばしく濃いのが特徴です。
砂糖とミルクを入れるとちょうど良いコクと風味を味わえるように仕上げているのだそうです。

一般的なブレンドコーヒーは4〜5種類の豆をブレンドしていることが多いのですが、純喫茶アメリカンでは店主自ら7種類もの豆をそれぞれが適した配分に調整してブレンドしています。
「多くの豆を使うとバランスの調整がむずかしくなりますが、長い時間をかけて改良を重ね、求めていた最高の味を実現することができた」とのこと。

1946(昭和21)年より手さぐりで自家焙煎をし始め、1965(昭和40)年からはドイツ製のプロバットという焙煎機で自家焙煎をしています。
初代店主から現店主までその技術が引き継がれてきました。
今はビルの5階に焙煎機を置くスペースを設けており、1台を修理に出している間も自家焙煎ができるように2台用意されています。

機械で行うサイフォン式ではなく、「ネル」と呼ばれる布のフィルターを使って入れるネルドリップ方式で全てのコーヒーを点てています。
高度な技術が必要ですが「最もおいしい」と言われている抽出方法なのだそうです。

アイスコーヒーで使用する豆はホットコーヒーとは別でブレンドしているので、冷たくても香り高いコーヒーを楽しむことができます。

豆を焙煎する時の火の入れ方もホットコーヒーの時とは違い、火が入る直前まで焙煎しないと豆の香ばしいコロコロ感が出ないので、火事にならない様にヒヤヒヤしながら行っているのだとか。

花のシャンデリアの真下にコーヒーを置くと照明が映り込み、キラキラと輝く特別なコーヒーを飲んでいるような気分になれます。
オシャレな写真を撮ることができるので、SNSでも注目を集めること間違いなしです。

食後のおやつにぴったり!ふわふわのホットケーキ

純喫茶アメリカン ホットケーキ

(ホットケーキ 600円)

老若男女問わず人気の高いホットケーキは、食事のあとでも食べられるようにと、ふわふわとした軽い食感で作られています。
出来合いのホットケーキミックスは使わず、数種類の小麦粉を店でブレンドしているので、上品で優しく、純喫茶アメリカンでしか食べられない味です。

メイプルシロップでは味が濃くて合わないので、ホットケーキの味がしっかりと分かるようにつくられたあっさりと上品な甘さの自家製シロップをかけていただきます。

店主の「温かいうちに食べてほしい」という想いから、ホットケーキ専門の銅板のプレートでていねいに焼いたあと、調理場でバターを塗り、6等分した状態で提供しています。

素早く取り分けて冷める前に食べることができるように人数分の取り皿とフォークを一緒に出してくれるのが、純喫茶アメリカン流のおもてなしです。

果物たっぷりのプリンファッション

純喫茶アメリカン プリンファッション

(プリンファッション  1300円)

見た目も華やかなプリンファッションは、多くの種類の果物を少しずつ味わうことができる贅沢な一品です。
果物店から直接仕入れており、プロが目利きした一級品を使っているのでどの果物も味が濃厚で、運ばれてくると甘い香りが広がります。

静岡県産のマスクメロンを使用していたり、冬でもすいかを乗せていたりと、果物の種類を揃えるのがとても大変だそうですが、純喫茶アメリカンでしか食べられないメニューだということもあり、誇りを持って提供し続けているそうです。

特製のプリンはしっかりとした固めの食感でたまごの味を楽しむことができます。
プリン単体での人気も高く、ダブルにして注文される方もいるそうです。
固めのプリンが好きな方はぜひダブルにして、その美味しさを堪能してみてください。

シュワシュワはじける懐かしのクリームソーダ

純喫茶アメリカン クリームソーダ

(クリームソーダ  740円)

甘くシュワシュワと爽快なソーダ水とアイスクリームがどこか懐かしさを感じさせる、子どもから大人までいつの時代も人気が高いクリームソーダ。
思わず写真を撮りたくなるようなエメラルドグリーンが美しいクリームソーダは、シロップから手作りされています。
アイスクリームもソーダに合うように作られており、甘すぎずスッキリとした味わいです。

イタリアンスパゲッティ

純喫茶アメリカン イタリアン

(イタリアンスパゲッティ  900円)

お腹が空いた時にぴったりなのがオリジナルブレンドのトマトケチャップで味付けされたイタリアンスパゲッティです。現在では「ナポリタン」と呼ばれることが多いですが、かつて関西では「イタリアン」と呼ばれていたことから、純喫茶アメリカンでは昔ながらの「イタリアンスパゲッティ」というメニュー名になっています。

玉ねぎ・ハム・マッシュルーム・ピーマンとシンプルな具材ながらもトマトケチャップの酸味との絶妙な相性で、どこか懐かしく飽きがこない深い味わいにファンも多数います。
とくに男性からの人気が高く、大盛りで注文される方も多いとか。

純喫茶アメリカン ショーケース

他にもホットサンドやケーキ、丼物まで、バラエティ豊かなメニューの数々は、常連さんからのリクエストで増えていったのだそうです。
市販品や出来合いのものが無い時代からお店を立ち上げたこともあり、どれも1から手作りしているメニューばかりです。
一品ができあがるまでにたくさんの工程があるので、レシピを確実に守りながら作っているとのこと。

創業から75年と長い歴史のなか、今まで仕入れていた製品が手に入らなくなったものも多く、代わりを探す際には「以前使っていたものと一番味が近い製品」であることを大切にし、何度も食べ比べをして昔の味と変わらないように調整して作られているそうです。

どれも仕込みに時間をかけて丁寧に作られた「純喫茶アメリカンでしか食べられない味」を堪能することができるこだわりのメニューばかりです。

テイクアウトも充実

純喫茶アメリカン おみやげ

純喫茶アメリカンではプリン・ショートケーキ・ホットケーキ・サンドウィッチのテイクアウトができます。

また、プリンは冷蔵、ホットケーキは冷凍で発送(送料別)のサービスが利用でき、希望する日時で受け取ることも可能です。
遠くから訪れた場合でも、家でもう一度純喫茶アメリカンの味を楽しむことができるのは嬉しいですね。

純喫茶アメリカン プリン

純喫茶アメリカン テイクアウト

純喫茶アメリカン テイクアウト

箱もポップでとても可愛らしいので、手土産としても大人気です。

純喫茶アメリカンの近くには芝居小屋やお笑いの劇場も多く、差し入れとして買って行く著名人も多いとか。

藤山寛美さんや笑福亭鶴瓶さん、小田和正さん、小籔千豊さんを筆頭に有名な俳優さんや人気歌手の方などもお店に来られたことがあるそうです。

著名人も多く訪れる純喫茶アメリカンですが、「憩いの場として来店されていますので、皆様にゆっくり過ごしていただきたい」という初代店主の方針を守り、店側からは極力声をかけないようにしているそうで、初代店主の温かい気遣いが、多くの人に愛されている理由だとよく分かります。

純喫茶アメリカンの変遷をたどる

純喫茶アメリカン 創業当時写真

純喫茶アメリカンは、1946(昭和21)年に初代店主の山野勝次郎さんが創立し、75年と長い歴史のなか、様々な苦難を乗り越えてきました。

初代店主は戦前は黒門市場で天ぷら屋を営んでいましたが、戦争が酷くなるにつれ、食用油ですら手に入らないようになり廃業せざるを得ませんでした。

その後、初代店主のお兄様が経営されていた飲食店を手伝いながら修行を積み、独立して商売することをを勧められ、自身の店を開業するに至ります。

当初、現在とは別の場所で「花月」という屋号で営業していました。
創業当時の1946(昭和21)年というと、物資や食料が何も手に入らず、米も配給制だったりと、戦後の苦しい時代です。
住むところが無い人も多く、場所や一緒に住む人数を国から指定された人も多くいたそうです。

上記の写真は創業時に撮影されたもので、右端に写っているカーテンは、2階に住む人が出入りできるようにと、国から配給された木材で階段を作り、取り付けた場所だったのだとか。

開業してからしばらくは喫茶店というよりも、食べ物屋さんや雑貨屋さんのようなお店に近く、その時々で手に入った食材を使って作れるものを出すスタイルでした。

その後、1950(昭和25)年頃には現在の店がある千日前商店街に移転し、誰にとっても覚えやすくて言いやすい「アメリカン」という店名に変えたそうです。

純喫茶アメリカン 創業当時写真

純喫茶アメリカン 創業当時写真

移転してからも商売は順調にいき、店の後ろの土地をどんどんと買い足して広げていきます。

ところがある日、隣の店から火が上がり、純喫茶アメリカンにも延焼してしまいます。

木造だったので火の周りが早く、お客さんや従業員を避難させるのが精一杯だったそうです。
店の一部が焼け、店内は水浸しになり調理器具や家具などが使えなくなってしまいました。

純喫茶アメリカン 写真

1963(昭和38)年、店を守れるようにと火事に強いビルに建て直します。
全ての窓には金網を入れ、防火扉を取り付けており、火の元を用心しやすいようガスも1階の店内にだけ設置しました。

「近隣から延焼しても店は守れるように、また、店で火事が起きても近隣に延焼しないように」と、当時の一般的な建築では珍しい最先端の防災技術が用いられていたこともあり、話題になったというエピソードも残っています。

近隣で再び火事が起きた時も窓ガラスは割れてしまいましたが、崩れ落ちたりビルに延焼したりはしなかったそうです。

こうした度重なる困難を乗り越え、一流のおもてなしを提供する純喫茶アメリカンは地元民からも観光客からも愛されるお店になりました。

豪華な内装や創業時から変わらない味のメニューなど、心からのおもてなしは慶事にも好まれ、純喫茶アメリカンでお祝いしたりお見合いの場として利用されることも多くなりました。
なかには親子3代で通い続けている家族もいらっしゃるのだとか。

現在は創業者のお孫さんである山野陸子さん・誠子さんが3代目店主を務めており、姉妹で力を合わせてお店を切り盛りされています。

親子3代にわたり受け継がれる商売への想い

現店主のお2人から見たお祖父様とお祖母様は、生活の全てを商売に合わせる、儲けは全て店につぎ込む、休みなく働き続ける、などとても商売熱心な方だったそうです。

そして陸子さんと誠子さんも、お祖父様の「働かざるもの食うべからず」の考えのもと、学生の頃から家に帰ってくると店を手伝うのが当たり前の生活を送っていました。「明日テストやねん」とレジの下に漢字ドリルを持ち込んで勉強しながら手伝いをしたこともあったとか。

お祖父様がよく話してくれたのが「閉店した後はゴミを見よ、ゴミを見ればその店のレベルと売り上げが分かる」という、商売熱心なお祖父様ならではのゴミの哲学。

お客様が何を残しているのかが一番大切なことで、完食していれば満足していただけている証拠。そして、ゴミが多い店は繁盛しているとのこと。

お祖父様はとてもまじめで、時には厳しい一面もあったそうですが、「おじいちゃんが商売するためのレールを敷いてくれたから、食に厳しい大阪の街で今も店を続けることができています。商売とはお客さんが食べたいものを作って提供することで、要望を叶えることが一番大切なことだと思っています、これからも楽しく食事ができる場所でありたい」と笑顔で話してくれました。

店舗詳細

店名/純喫茶 アメリカン
住所/大阪府大阪市中央区道頓堀1-7-4 株式会社アメリカンビル
電話番号/06-6211-2100
営業時間/9:00~23:00(ラストオーダー22:15)
火曜日は9:00~22:30(ラストオーダー22:15)
※火曜日も祝日、祝前日は通常通り営業しています
定休日/12月31日(不定休で月に3回ほど木曜日に休みがあります)
公式ホームページ

まとめ

今回は大阪・千日前商店街にある「純喫茶アメリカン」をご紹介しました。

自家焙煎のコーヒーや、手間ひまを惜しまずに真心を込めていちから手作りされた豊富なスイーツ・フードメニューは、純喫茶アメリカンでしか味わえません。また、その時代でしかつくれなかったであろう唯一無二の豪華な内装は、どこか非日常的でありながら、居心地の良い落ち着いた雰囲気を演出してくれます。

時代とともに街や人が変わり純喫茶は少なくなりつつあるなか、受け継がれてきた味やこだわりを守っていくことはとても大変です。しかしお客様へのおもてなしの心を忘れず、商売への熱い気持ちを大切にする姿勢こそが、たくさんの人に愛され続ける理由なのでしょう。

街のにぎやかさから離れてゆっくりと至福のひとときを楽しみたい方は、半世紀以上も愛され続ける純喫茶アメリカンに足を運んでみてはいかがでしょうか。

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