越前打刃物ブランド「三本盛」、初の実店舗がなんばにオープン

2026 年 8 月 21 日、大阪・戎橋筋商店街に、越前打刃物を扱う包丁専門店「三本盛(みつもとさかり)」の初の実店舗がオープンしました。店内には、家庭で使いやすい三徳包丁をはじめ、牛刀、出刃包丁、ペティナイフ、キッチンばさみ、砥石などがずらり。1 万円台の家庭用から、職人技を凝らした 10 万円を超える一本まで、実際に手に取り、重さや握り心地を確かめながら選ぶことができます。

福井県越前市で受け継がれてきた刃物づくりの歴史や自分に合う包丁の選び方について、店長の尾崎さんにお話を伺いました。

目次

越前打刃物の魅力を大阪で広めたい。150年の歩みと思いも共に受け継ぐ。

戎橋筋商店街に面し、間口を広く取った店は、通りから店内を見渡せる明るく開放的な造り。包丁に詳しくない人でも、気軽に立ち寄れる雰囲気です。

これまでオンラインを中心に販売してきた「三本盛」にとって、ここは初めての実店舗。こちらでは、包丁を実際に手に取り、重さや握り心地、刃の表情まで確かめながら選ぶことができます。

「三本盛」を立ち上げたのは、越前市の老舗刃物ブランド「キリン刃物」の四代目・飯田保孝さん。飯田家は150年以上にわたって越前で刃物づくりを家業とし、技を受け継いできました。飯田さんも包丁の鍛造や加工に関するさまざまな技術を開発し、特許を取得。2018年、「一つの道を極め、一生をかけて追求する」という信念のもと、新たなブランド「三本盛」を誕生させました。

初の実店舗に戎橋筋商店街を選んだ理由を尋ねると、尾崎さんはこう話します。

「関西の方になじみのある商店街だというのが一番です。商売の神様である今宮戎の参道として発展してきた場所ですし、料理人が通う木津市場も近い。包丁を扱う店には、いい場所なのではないかと思いました。また、福井は関西から意外と近いんです。鉄道なら1時間台ですし、車でも3時間ほど。何かきっかけがあれば、実際に越前へ足を運んでいただける距離です。まずは関西から、越前の包丁を広めていければと思っています。」

店頭では、素材や手入れの方法など、いろいろなことを聞かれるので、どんな質問にも答えられるよう、鋼材や包丁の種類や製法、越前打刃物の歴史について数日間にわたる研修もおこなったそう。英語、中国語、韓国語に対応できるスタッフも在籍しているので、初めて包丁を選ぶ人から本格的な一本を探している料理人まで、どんな人にも心強いお店です。

約700年、受け継がれてきた越前打刃物の歴史と職人技

「三本盛」の包丁に息づいているのが、約700年にわたって受け継がれてきた越前打刃物の技です。その歴史は、南北朝時代にまでさかのぼります。

始まりとされているのは、京都の刀匠・千代鶴国安が、刀を鍛えるのに適した水を求めて現在の越前市へ移り住み、刀づくりのかたわら、農民のために鎌を作ったこと。その後、越前の鎌は、各地を巡る漆かき職人によって全国へ広まり、江戸中期から明治期にかけて、この地は鎌の一大産地へと発展しました。

日本古来の火づくり鍛造や手仕上げの技を守り続け、1979年には、刃物産地としては全国で初めて国の伝統的工芸品に指定。現在は包丁を中心に、その品質と美しさが国内外で高く評価されています。

一般に「越前刃物」と呼ばれることもありますが、正式な名称は「越前打刃物」。熱した鋼を職人が繰り返し打ち鍛え、一丁ずつ仕上げていくことに大きな特徴があります。

なかでも越前打刃物を象徴するのが、「二枚広げ」と呼ばれる独自の技法です。二枚の刃を重ね、表と裏から交互に打ちながら、同時に薄く延ばしていきます。二枚を一緒に鍛えることで、刃を薄く均一に仕上げやすくなるという、長年の経験から生み出された職人の知恵。切れ味に優れた越前打刃物を支える、伝統の技のひとつです。

三徳包丁から釣り人の出刃まで。暮らしや用途に合う一本を

店を訪れる人が包丁を求める理由はさまざまです。尾崎さんが印象に残っているのが、嫁入り道具として持ってきた包丁を、20年、30年と使い続けてきた女性です。

「ずっと研ぎながら大切に使っておられたのですが、柄が傷んだり、研ぐうちに刃が小さくなったりして、そろそろ新しいものをと来店されました。長年使われてきたので、きちんとした包丁のよさもよくご存じでした。」

また、大阪湾などで釣りを楽しむ男性が、自分で釣った魚をさばくための出刃包丁を探しに来ることもあるそうです。一方で本格的な包丁を選ぶ前に、まずはペティナイフやキッチンばさみを購入する人も。「取り入れやすいものから試していただくのもいいと思います。」

包丁の種類や素材がよく分からないという人に、最初の一本としておすすめするのは三徳包丁です。肉、魚、野菜に幅広く使えることから「三徳」とと呼ばれ、日本の家庭で広く使われています。選ぶときのポイントについて、尾崎さんはこう話します。

「家庭に一本あると便利です。ただ、高価なものが、その方にとって使いやすいとは限りません。実際に握って、重さや柄の感触を確かめてもらっています。男性や海外の方は、重みのある包丁を選ばれる傾向がありますね。日本人女性には、軽いものが人気です。」

海外からの旅行客に人気が高いのは、刃に幾重もの波のような模様が浮かぶ「ダマスカス包丁」だと、尾崎さんは話します。「この模様は何ですか?という質問はよく受けますね。ダマスカス模様は後から描いたものではなく、異なる素材を重ねて鍛えることで自然に現れるものです。切れ味だけでなく、一本ずつ異なる模様の美しさが人を引きつけます。」

高価格帯の包丁になると、柄や口輪の素材にも水牛の角や希少な木材、マンモスの牙などが用いられています。水牛の角を使ったものは、内部に水が入りにくく、傷みにくいという利点もあるそうです。話を伺っていると、包丁の世界の奥深さに驚かされます。

硬いかぼちゃもスッと。使って実感する切れ味

尾崎さん自身も、「三本盛」の包丁を家庭で使うようになり、それまで使っていたものとの違いを実感したそうです。

「野菜がサクサク切れますし、特に違いを感じるのが鶏肉です。今までは皮の部分が切りにくいと思っていましたが、それがスッと切れるようになりました。お客さんからよく聞くのは、硬いかぼちゃが切りやすくなったという声です。かぼちゃは電子レンジで少し加熱してから切る方も多いと思いますが、切れ味のよい包丁なら、それほど苦労せずに切れますよ。」

料理する人の手になじみ、暮らしに寄り添う一本を、実際に握りながら選べる「三本盛」。毎日の料理に使う初めての一本から、長年愛用した包丁に代わる新たな一本まで、使い方や好みに合わせて相談できるのも、実店舗ならではの魅力です。

包丁を買い替えたい方はもちろん、越前打刃物の歴史や美しい刃模様に興味がある方も、戎橋筋商店街を訪れた際は、「三本盛」に立ち寄ってみてくださいね。

店舗情報

店名/三本盛難波本店
住所/大阪市中央区難波3-2-26
営業時間/11:00~21:00
定休日/なし
電話番号/06-6760-4518

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