3月11日、東日本大震災から10年目を迎えます。
震災後1年が経った頃、戎橋筋商店街の商店主は宮城県の南三陸町を訪れボランティアを行いながら、大地震の恐ろしさ、災害の備えの重要性を肌身で感じました。

志津川病院

商店街メンバーがボランティア活動を行った志津川病院(2012年2月 南三陸町)

南三陸町 復興市

南三陸町の復興市でリーダーの山内さん(左から二人目)と

コロナ禍でまだまだ自粛モードとはいえ、なんばには仕事やお買物で多くの人が来られます。
なんばにいる時に大地震が起こったら、一体どうなるのか。津波は、建物は?それに対して皆さんはどのように行動すればよいのか?行政や、なんばの商店街や企業はどのような備えをしているのか。

南海なんば駅前

南海なんば駅前

今回の記事は戎橋筋商店街の事務局が、なんばにお越しになる皆さん、働いている皆さんに知っていただきたい震災への備えをお伝えします。

大阪市域で発生が予想されている大地震はいつ起こるのか?

大阪市域に影響を与える大地震として、海溝型の「南海トラフ地震」、内陸活断層による「上町断層帯地震」が想定されます。
南海トラフ地震は、日本近海の太平洋で、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んで起こる地震です。マグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率が70~80%と予想されています(2020年1月24日時点、政府組織である地震調査研究推進本部地震調査委員会)。

さらに、その時期を次のように詳しく予想しています。
南海トラフでは過去1400年間に約90~150年の間隔で大地震が発生しています。直近では1944年の昭和東南海地震や1946年の昭和南海地震が発生しており、先の委員会では次の地震までの間隔を88.2年と予測しています。昭和南海地震発生年からは2021年時点で約75年を経過していますので、南海トラフ大地震はいつ起こってもおかしくありません。

次に上町地震は、豊中市から岸和田市に至る断層帯で起こる地震です。
断層は大阪市内の松屋町筋付近を南北に縦断しています。最近の調査では西区や浪速区の新なにわ筋線付近に湾曲する断層があると指摘されており、どちらもなんばのすぐ近くを通っています。
地震規模を示すマグニチュードは7.5~7.8と予想されています。発生する確率は今後30年以内に2~3%です。数字だけを見ると低いように思われますが、阪神淡路大震災(マグニチュード7.3)の発生確率は0.02~8%であったことがわかっていますので、決して油断できるものではありません。

災害想定(震度分布・液状化予測・津波浸水想定)について 出典:大阪市危機管理室(大阪市ホームページ)

では、大地震による被害の予想をみてみましょう。

大地震により、なんば周辺はどうなる?

南海トラフ大地震や上町地震が発生した場合の影響について、大阪市が公表しているデータがあります。
なんばは大阪市中央区にありますので、中央区と大阪市域全体の予想値でみてみましょう。南海トラフ巨大地震の強度は5強~6弱と予想されています。大阪市中央区内の建物全体の約13%にあたる2200棟が全半壊するものと想定されています(大阪市域全体では建物の約54%にあたる29万6千棟が全半壊と予想)。
死者数は、中央区内は4人で、そのうち津波による死者は1名です。大阪市全体では12万人で、このうち津波による死者は10万人に及ぶと予想されています(平成25年度想定)。
発生した津波は約1時間50分後に大阪市の沿岸部に到達、上陸してからJR難波駅のあるOCATの西側まで到達しますが、なんばまでは到達しないと予想されています。

水道・電気や携帯などのライフラインはどうなるのか?

地震発生後最初の1日目は大阪市内のほぼ全戸が断水、55%に当たる80万軒が停電、ガスは22%に当たる約30万軒が停止。固定電話の48%が、携帯電話の基地局も約34%が不通になると予想されています。
交通機関の運行は止まり、自宅に戻ることが困難となる帰宅困難者数は大阪市内で約87万人、難波駅では9万5千人発生すると予想されています。東日本大震災の時には、慌てて帰宅しないように政府がよびかけ、様々な施設が一時的に避難できるように受入協力を始めました。

帰宅困難者

東日本大震災で発生した帰宅者と交通渋滞(出典:「平成24年警察白書」(警察庁))

東日本大震災で発生した帰宅者と交通渋滞(出典:「平成24年警察白書」(警察庁)

ところが交通機関が運行を停止しているため夕方になると自宅に徒歩で帰ろうとした人々で主要幹線道路はあふれ車の渋滞も続き、約515万人の帰宅困難者が発生しました。帰宅を途中で断念し体調を崩す人や、道路の渋滞で緊急車両が動けなくなるという事態が発生したのです。
南海トラフ(巨大地震)による大阪府域の被害想定(人的被害・建物被害)の公表について 出典:大阪市危機管理室(大阪市ホームページ)

南海トラフ(巨大地震)による津波浸水想定 出典:大阪市危機管理室(大阪市ホームページ)

上町断層帯地震の強度は5強~7に及び、大阪市中央区では建物の70%にあたる1万870棟が、大阪市域全体でも建物の55%が全半壊すると予想されています。死者数は中央区内で約2200人(大阪市全体では約8500人)と、都市の直下型地震の影響は甚大なものとなります(平成18年度想定)。

上町断層帯地震 出典:大阪市危機管理室(大阪市ホームページ)

次は、東日本大震災で問題となった帰宅困難者のお話をします。

帰宅困難者とは?なんばで地震に遭った時の心構えとは?

帰宅困難者とは、自宅が遠距離にあるので帰宅できない人と、遠距離でも徒歩で帰宅する人をいいます。自宅が比較的近い距離であっても、道中で建物の倒壊や落下物をはじめ様々な危険に遭遇し断念する人も出てきます。
帰宅を急ぐ数万人もの人が難波駅周辺に一斉に移動を始めたらどうなるでしょう?混雑の中で将棋倒しになる事故が起きたり、道路が人であふれて緊急車両が通行できなくなって救助・救急救命・消火活動の妨げになります。

そのような事態を防ぐためには、慌てて帰らないことがまず大事です。地震発生直後の心得として特に注意をしてほしい点をまとめましたのでぜひ参考にしてください(商店街の防災マニュアルから抜粋)。

◆外出時にはできるだけ歩きやすい靴を選び、水を持ち歩く。
(なんばでお勤めの方は歩きやすい靴を会社に置いておく)
◆倒壊しかけの建物や壁、ガラスのそば、看板の下に近づかない。
◆直線距離10km以上の移動は徒歩では困難。あわてて帰宅せず安全な場所に留まる。
◆車で移動しない、迎えの車を呼ばない。(救助や消防の車両通行を妨げます。)
◆NTT災害用伝言ダイヤル【171】、SNSなど安否確認の方法を家族や社員で申し合わせておく。
◆インターネットが使えれば「おおさか防災ネット」にアクセス。

おおさか防災ネット

ところで、安全な場所に留まるというけど、どこに一時避難すればよいのでしょうか。

なんば駅周辺の企業や商店街では、一時避難の受入れを相談しています。

なんば駅のすぐ近くには一時避難できるような大きな公園はありません。広域避難所である大阪城公園までずいぶん距離があります。そこで大阪市では、多くの帰宅困難者の発生が見込まれる主要駅周辺の企業や団体、学校等に協力を呼びかけて、東日本大震災の経験を参考にしながら、帰宅困難者の施設内への一時受け入れなどの対応について検討が重ねられています。

防災訓練 戎橋筋商店街

戎橋筋商店街の防災訓練の様子

なんばでも難波駅周辺地区帰宅困難者対策協議会が設立され、関係者が話し合いを行い「帰宅困難者対応マニュアルVer.1」を作成しています。このマニュアルは、協議会に入っていない事業者の方々にも利用してもらえるように公開しています。
大規模災害時における帰宅困難者対策 出典:大阪市危機管理室(大阪市ホームページ)

戎橋筋商店街は南海なんば駅前と道頓堀との間にあるアーケード街ですから、多くの帰宅困難者がここで留まると予想されます。そこで、地震発生直後に停電しても発電機器を使って、アーケード内で放送を行えるようにして、避難者に情報を届けるようにしています。3月11日には商店街の役員がこの設備を実際に作動する訓練を行いました。

放送設備 戎橋筋商店街

商店街事務所内の放送設備

備蓄品 戎橋筋商店街

災害時の備蓄品

商店街に加盟している店舗でも、スタッフは慌てて帰らず安全確認のうえ店舗内にとどまり、困っておられる来街者に対応するようにしています。水やトイレの凝固剤、生理用品や手回し充電器付きラジオなど、一人3日分の災害備蓄品も用意しています。

この商店街の防災の取り組みは、テレビ大阪(2021年3月11日放映)でも取り上げられました。

まとめ

大地震はいつ起きてもおかしくなく、なんばで大地震に遭ったら多くの建物が倒壊し、鉄道もライフラインもストップします。あなただけでなく、もし家族が一緒に訪れていたら、帰宅困難者になる恐れがあります。
なんばのまちでは、商店街、企業や行政が協力して、少しでも被害を減らせるように備えています。皆さんも常日頃から家族や会社で災害時のことを話し合って、連絡手段の確認方法などを決めておきましょう。この記事で紹介している心得はきっと役に立ちます。活用してください。