大阪を代表する繁華街であるなんばには商店街が数多くあり、古くから愛され続ける名店が軒を並べます。今回ご紹介するシバチョウ本店は、戎橋筋(えびすばしすじ)商店街に隣接する難波センター商店街の中にある創業150年余りという老舗の酒屋です。長きにわたってお酒を販売しているだけでなく、朝から立ち寄ってお酒が飲める「角打ち」としても地元の人に愛されています。
お酒は好きだけど1人ではなかなか新しいお店に入りにくい方、なんばのディープスポットを探している方はぜひ参考にしてみてください。
シバチョウについて
幕末期に柴屋長兵衛氏が創業し、初代の田中弥助氏がお店を引き継ぎ、今日に至ります。2021(令和3)年の現在では6代目がお店を切り盛りしています。
お店の明確な創業日は古すぎて店主もはっきり分からないとのことですが、江戸時代末期から明治時代初期にこの場所で酒屋を始められたそうです。
シバチョウの店舗は第二次世界大戦の戦火で1度焼失し、現在の石造りの建物は戦後に建て替えられました。
お店の前には何台ものお酒とたばこの自動販売機が並んでいます。シバチョウが初めての方は一見すると、店先の雰囲気から入りづらい印象を受けますが、1歩足を踏み入れると気さくに出迎えてくれるお店の方がいます。
角打ちとは?
「角打ち」と書いて「かくうち」と読みます。
角打ちとは、酒屋の店内の一角で立ち飲みが出来るスタイルのことです。基本的に酒屋の営業時間内で立ち飲みが出来るため、シバチョウでも開店の朝9時30分から立ち飲みが楽しめ、夜勤明けに一杯飲んでいかれる方も多いそうです。
角打ちのスマートな利用方法は楽しくおしゃべりしながら、たくさん飲むというものではなく、1人で大体1~2杯程度飲むと、お店をすぐに出るという飲み方です。
店内の雰囲気
お店の中には所狭しと、ありとあらゆるお酒の瓶が並んでいます。
店主の田中さんも数えられたことがないそうなのでわかりませんが、優に数百種類ありそうなラインアップです。
日本酒以外にウイスキーやワインの種類も多くあります。
外観からはわかりませんが、お店には地下室があり倉庫としてワインなどがたくさん貯蔵されています。室温が低くお酒を保管しておくのに最適な環境です。
店内は2、3人が立ち飲みできるスペースがあります。
お店に入ってすぐの壁には日本酒の説明書きがびっしりと貼られていて、お酒好きの方は今までに飲んだことが無い新しい銘柄のお酒が見つかるのではないかと期待が高まります。
この説明書きは店主の田中さんが手書されたもので、お酒の種類、産地や飲みやすさなどの特徴が書かれていて、美味しいお酒を伝えたいというメッセージが伝わってきます。
角打ち(立ち飲み)の楽しみ方
前払いのシステムで取り扱いは現金のみ。注文ごとに支払います。陳列されている酒瓶にはグラス1杯の価格が書かれていて、分かりやすく注文しやすいです。
一般によく知られた人気のあるものから珍しいお酒まで、種類はさまざま。
角打ちが初めてで何を飲むか決められない方は、説明書きを見て決めても良いですし、自分の好みの味をお伝えすれば相談にも応じてくれます。
冷蔵庫には冷酒やワインが冷やされています。
瓶ビールはいつもカッチリ冷えていて、他店で飲むよりもおいしいと人気だそう。
ワインの種類も豊富で、この日は解禁したばかりのボジョレーヌーボーを楽しんでいるお客様もいらっしゃいました。
飲み方は日本酒であれば燗、焼酎やウイスキーも好みの飲み方に可能な限り対応してくれます。
お酒にあわせて注文したいおつまみ
お酒に合うおつまみは乾きもの、漬物、缶詰と充実しています。
缶詰は希望すれば日本酒を温める燗銅壺(かんどうこ)に入れて温めてもらえます。
店主のおすすめ日本酒
愛媛県 首藤酒造株式会社「寿喜心 うすにごり生酒」
創業明治34年の首藤酒造は、杜氏を置かずに兄弟3人でお酒造りをされている珍しい酒蔵です。
そんな首藤酒造の看板商品の「寿喜心」は、「肴なしで飲める酒」をコンセプトに、西日本最高峰の石鎚(いしづち)山系から流れる清らかな軟水を使って作られています。
シバチョウでは「寿喜心 うすにごり生酒」を、冷えたグラスに注いで提供。フルーティーな香りとお米の甘みが味わえます。微発泡酒でシュワシュワとした飲み心地は、女性や日本酒初心者の方に好評なのだとか。
あわせておすすめしていただいたムール貝の缶詰とお酒がよく合います。
北海道 旭川 男山株式会社 「男山 国芳乃名取酒」
辛口のお酒がお好きな方には「男山 国芳乃名取酒」がおすすめとのこと。北海道の恵みである雪から染み出る伏流水で仕込んだ大辛口純米酒です。かすかに酸味を感じるシャープな切れ味で、すっきりとしていて飲みやすいのが特徴です。
ラベルのデザインにもなっている赤穂浪士たちが男山の酒を飲む姿を描いた歌川国芳の浮世絵「誠忠義臣名々鏡」から名前がつけられています。
「北海道のお酒なのに、なぜ赤穂浪士?」と、疑問に思われる方もいるかもしれません。男山はもともと兵庫県伊丹にあった山本酒造が作っていた銘酒で、美酒の代名詞的存在でした。
江戸時代には徳川将軍家の五膳酒に採用されるなど人気がありましたが、灘の酒ブームに押しやられ明治の初めに廃業。しかしながら、男山株式会社の前身である山崎酒造が昭和の半ばに山本酒造の末裔を訪ね当てたことで、北海道で伝統ある「男山」が復活を遂げたそうです。
こうした歴史に思いを馳せながら、お酒を味わうのも楽しみのひとつですね。
珍しいお酒のラインアップ
「お酒はブランドで売るより味で売りたい」という店主田中さんのこだわりから珍しいお酒の取り扱いもされています。
徳島県 本家松浦酒造「とうがらし梅酒」
創業200年以上の本家松浦酒造は現在、女性の蔵元が活躍されています。
日本酒だけでなく「とうがらし梅酒」などのユニークな商品も製造されています。梅酒の瓶をよく見ると1本の唐辛子がプカプカと浮いていてビジュアルが可愛らしく、プレゼントにも最適なお酒です。
はじめは梅酒のほのかな甘み、後味は唐辛子のピリッとしたスパイシーな刺激があり、一度飲めばやみつきになるそうです。梅酒と唐辛子は国内のものを使用しています。
唐辛子成分のカプサイシンは発汗を促進し、血液の循環が良くなりますので辛いものが大丈夫な女性の方におすすめです。
大阪府 河内長野 天野酒の「僧房酒」
天野酒は大阪・河内長野市にある創業300年以上もの歴史がある酒蔵です。
僧房酒は室町時代、河内長野の天野山にある金剛寺の僧侶によって造られていたお酒の製法を再現して復刻されました。豊臣秀吉もこのお酒が大好きで、たびたび使者を使って買い求めていたそうです。
琥珀色で濃厚な甘口、少しとろみがあって、デザートワインのような感覚で飲めるお酒です。甘めのお酒がお好きな方はぜひ試されてみてはいかがでしょうか。
6代目店主のお酒愛と信念
シバチョウが愛され続ける理由のひとつは、店主の田中弥助さんの気さくな雰囲気とお酒についての深い思いが大きいと言えます。シバチョウの6代目を継ぐことは自然な流れで自ら決断され、大学生の時には学校に通いながら店頭に立って商売の手伝いをされていたそう。
老舗の暖簾を守りつつ、時代に沿って変えていくことも大切だと考られていて、お客様の期待に応えるべく田中さんの代になって店頭や角打ちで取り扱うお酒やおつまみの種類を増やしたそうです。
取材の際、初めてシバチョウを訪れたという若い男性と和気あいあいと話をされていました。すぐ飲んで帰ることが角打ちのマナーではありますが、お酒愛がひしひしと感じられる店主・田中さんとの会話を肴にお酒を楽しむ方は多く、他の角打ちでは味わえないシバチョウの大きな魅力といえます。「これからもお客様に愛され続けるようがんばります」と温和にお話しいただきました。
店舗情報
店名/酒柴長本店 シバチョウ
住所/大阪市中央区難波3-2-32
営業時間/9:30 ~13:30
16:30~20:00
定休日/日曜、祝日
ホームページ/難波センター商店街
アクセス
大阪メトロ御堂筋線B-13 出口の階段を上がってすぐ、戎橋筋商店街のアーケードを右へ曲がります。
そのまま商店街内を直進します。
左手に見える「とらや」跡を左折します。
左折すると難波センター商店街に入ります。
約10メートル直進すると右側にシバチョウ本店があります。
まとめ
今回ご紹介しましたシバチョウは食事に行く前の軽い1杯や、仕事後に軽く飲んで帰りたい時、立ち飲みを楽しみたい方が気軽に立ち寄れるお店です。良い銘柄、珍しいお酒などがお値打ち価格で楽しめ、気に入ったお酒は購入もできます。
お酒好きな方はもちろん、お酒は好きだけど立ち飲みは初めてという方もぜひ1度、なんばに来られた際には老舗シバチョウで角打ちデビューをされてみてはいかがでしょうか。
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大阪出身のオリ姫。
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中東のカタールに住んでいたこともありますが、究極の暑がりで夏と暑いところが苦手。
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