江戸時代初期に大阪で成立した日本の伝統芸能「人形浄瑠璃文楽(にんぎょうじょうるりぶんらく)」。
高い芸術性と大衆性を兼ね備えた「文楽」は実は大阪が本拠地。また「国立文楽劇場」は日本橋にあり、ミナミエリアの中心地、道頓堀にも近いです。ここでは「文楽」を楽しく鑑賞するためのポイントなどご紹介します。

文楽ってなに? 

文楽の始まりは江戸時代初期にさかのぼります。「人形」と「浄瑠璃」、それぞれ別々に発達してきたものが16世紀末に偶然結びつき「人形浄瑠璃」になりました。その発展過程で「人形浄瑠璃」の代名詞が、上演していた劇場名にちなんで「文楽」という呼び名になったと言われています。

さらに、「文楽」は2008年ユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。近年では「和食」も登録されたのが記憶に新しいですね。
そのような芸能が当時から上演されていた道頓堀にほど近い日本橋で、今でも鑑賞できるなんて素晴らしいですね。

「世界無形文化遺産」とは、芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地の歴史や生活風習などと密接に関わっているもののことです。
ユネスコの「無形文化遺産の保護に関する条約」では、この無形文化遺産を保護し、相互に尊重する機運を高めるため、「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)」というリストを作成しており、日本からは「歌舞伎」「能楽」など21件(2013年4月現在)が既に登録されています。
出展元:農林水産省HP 

人形浄瑠璃ってどういうもの?

江戸時代の人気脚本家近松門左衛門をご存知ですか?彼は文楽と歌舞伎の戯曲を生涯に100作品も書きました。「曾根崎心中(そねざきしんじゅう)」「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」などが大ヒットし、今でも人気の演目です。

文楽は歴史を背景にした「時代物」、町に住む人々の義理人情や色恋を描いた「世話物(せわもの)」に大きく分けられます。人気になったのは、実際に起こった心中や殺人、金銭の横領事件を元にして書かれたので、観客の関心が高まりました。
また、身分の差や家のしがらみなど民衆の気持ちに共感することを題材にしたことで、人気が出たのです。ちょうど町人文化が花開いた元禄の時代、「文楽」もその波に乗って発展していきました。

文楽の芸術性の高さから、同じ演目が歌舞伎でも演じられており、現在でも世話物では「曾根崎心中」や「油地獄女殺し」、時代物では三大名作「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」などが上演されています。

知っていると数倍おもしろい見どころ

浄瑠璃は「義太夫節(ぎだゆうぶし)」ともいわれますが、太夫(たゆう)の感情たっぷりの語りの声と、太棹(ふとざお)の文楽三味線から出る力強い音色が劇場いっぱいに広がるために迫力満点です。

文楽が大阪発の芸能だということに、改めて気がつく瞬間は、義太夫節のイントネーションやしゃべり口が関西弁だということです。

上演中は語りの字幕が舞台上部に流れます。ただし、当時の言葉づかいだったり、音楽の節(ふし)に合わせて言葉が延ばされたりするので、大阪人でも聞くだけでは意味が分からないことが多いのも事実です。 

そんなときに安心なのは、イヤホンガイド。
見どころや物語の背景、人形の衣装の模様、小道具の説明など、細部の解説をライブで聞くことができます。文楽をよりいっそう楽しめること間違いなしです。

イヤホンガイドがあまりお好きではない人には、ぜひプログラムをおすすめします。1冊750円で、劇場の売店で購入できます。演目のストーリーや配役、技芸員(ぎげいいん)のインタビューなど文楽のいろんな情報が載っています。事前に目を通しておけば、ストーリーの理解が格段に速くなりますよ。

年に1度の文楽鑑賞教室

年に1度、6月頃に公演と解説がセットになった文楽鑑賞教室が開催されています。
なじみある演目や、有名な演目などに加え、出演者による実演を交えた解説でより文楽の魅力を知ることができます。

また2019年度の文楽鑑賞教室では、お仕事終わりの方に向けた「社会人のための文楽入門」や、外国人向けの「Discover BUNRAKU」というイベントも開催。
それぞれ2時間10分ほどの公演時間を予定しています。

来場者全員に公演パンフレットと小冊子「文楽入門」のプレゼントもあり、初めて文楽を鑑賞する方、文楽に親しんでいる方も楽しんでいただけるイベントです。

2019年度の文楽鑑賞教室 詳細

第36回「文楽鑑賞教室」

開催期間/2019年6月7日(金)~6月20日(木)
前半/6月7日(金)~13日(木)
後半/6月14日(金)~20日(木)
※6月19日(水)、20日(木)の午後の部は貸切。

開演時間
午前の部 10時30分
午後の部 14時

公演内容
「五条橋」
昔話でもおなじみ、夜の京都の五条橋を舞台に源氏の貴公子牛若丸と武蔵坊弁慶の2人の出会いを描いた「五条橋」

解説
出演者による実演交えた解説。

「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」

藤原時平(ふじわらのしへい)との政治争いに敗れた菅原道真(すがわらのみちざね)が九州に流されるまでのいきさつ、菅原道真に恩を受けた三つ子の兄弟とその家族の姿を描いた時代物の名作。

観覧料/3,900円(学生 1,400円)

期間中のイベント

「社会人のための文楽入門」
日時/6月10日(月)、18日(火)
18時30分開演、20時40分終演予定

「Discover BUNRAKU」外国人向け
日時/6月15日(土)
14時開演、16時10分終演予定
※字幕は英語、解説は日本語と英語を交えた内容です。

注意
「社会人のための文楽入門」、「Discover BUNRAKU」では、フリーアナウンサーの八木早希さんによる解説と「菅原伝授手習鑑」を上演します。「五条橋」の上演はありません。

文楽人形はどうやって動かすの?

「人形」は1体を3人の人形遣い(にんぎょうつかい)で操ります。
これは、世界に例を見ないものなんだそう。重さは衣装によって変わりますが、だいたい10kg以上ある人形を主遣い(おもづかい)が片手で持ち上げています。

主遣いが顔と右手を動かし、左手は左手遣い、両足は足遣いの3人が息を合わせて動かすことで、まるで生きているかのような繊細な動きを表現します。人形の顔は、役柄に合わせて使われる頭(かしら)によりますが、目や口も動かせるものもあれば、動かないものもあります。

限られた表情なのに、3人で操られた人形からは、義太夫節と相まって登場人物の心の動きがじんじんと伝わります。表現豊かに魅せる一人前の人形遣いになるまでは足10年、左手10年、主使い10年となんと合計30年の修行に時間が掛かると言われています。

人形の詳細は資料館でも確認できます。手の指の作りもとても繊細です。また、女の頭の口の横には針が飛び出しているものがあり、そこに布をひっかけると、くわえているように見え、口惜しさなどを表すこともできるんですよ。

劇場でのより快適な過ごし方


 
劇場内のロッカーは10円で利用できます。ただし美術館のようにお金は戻ってきません。
座席スペースはあまり広くないため、冬場はコートなど預けておくと大変便利です。幕間と幕間には休憩がありますが、長めの休憩時間は1度あります。スケジュールは劇場1階チケット売り場付近と、劇場内の入口付近に看板が出ているので、あらかじめ確認しておくことができます。

長めの幕間を利用して、ロビーでお弁当を広げることができます。
事前に買って持ち込むこともできますが、売店でお弁当が数種類販売されており、お饅頭にコーヒーやお茶も購入できます。

または、劇場から出て、劇場並びにある讃岐うどん屋に駆け込むこともおすすめです。その時はチケットの半券を忘れずに!再入場の際に必要です。

トイレの数は多いのですが、多少並ぶことは必至です。休憩時間に入ったら、さっとトイレに向かいましょう。
劇場内の左右と劇場1階の展示室横にあります。

喫煙ブースもあり、愛煙家も安心です。ロビーに居てもモニターテレビが設置されているので、舞台の様子が分かります。

充実したお土産屋さんもあり、お菓子のほか、文楽劇場オリジナルグッズなどお買い物をするのも楽しいです。


  
ロビーには文楽人形が飾ってあり、写真撮影もできます。文楽をテーマにした絵画や次回公演案内、スタンプコーナーもあるので、飽きません。


    
また、劇場1階の展示室は誰でも入ることができます。実際に文楽人形や舞台道具、浄瑠璃三味線(じょうるりしゃみせん)や太夫(たゆう)の床本(ゆかほん)などの展示があります。文楽公演中はボランティアガイドによる説明もあり、実際に手にとってみる体験もできます。また、その時の公演演目に沿った展示がされますので、いっそう観賞の手助けになると思います。早めに到着したら、まずここをチェックするのがおすすめですよ。

展示室を入ってすぐ右手には各国語のパンフレットも充実していますので、チェックしてみてくださいね。

文楽のチケットの買い方など


 
文楽の公演シーズンは大阪・文楽劇場で年5回あり、東京では年4回催されます。その他は地方や海外で公演されています。

大阪・文楽劇場の場合

第1部 午前11時開演
第2部 午後4時開演
※第3部18時15分開演がある時は第2部は午後2時開演になります。

途中約30分の幕間があり、外に出ることも出来ます。

1等 一般6200円、学生4300円 (時期によって、値段が変わります。)
2等 一般・学生とも2800円 (時期によって、値段が変わります。)

劇場窓口はもちろん、チケット予約は電話でもできます。
その場合は、国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)へ。
0570-07-9900(ナビダイヤル)
03-3230-3000(一部IP電話等) 

インターネットでは、国立劇場チケットセンターへアクセスしてください。
ほかには、チケットぴあ、ローソンチケット、JR西日本、e+(イープラス)での取り扱いもあります。

幕見席なら好きなところだけ格安で観られます

または、好きな演目だけを気軽にご鑑賞できるのが幕見席(まくみせき)。

演目ごとに割安の値段が設定され鑑賞できます。ちょっとだけ体験したい人にはもってこいです。ただし当日限定、劇場での販売のみになりますが、時間の限られている時は役に立ちます。国立文楽劇場1階のチケット売場にて営業開始時間(午前10時)より、先着順に販売されますが、各幕24席までです。だいたい1000円位からになります。

「国立文楽劇場友の会」にだれでも入会できます

文楽の魅力を発見したという方や文楽を続けて見てみたい!という方には、「国立文楽劇場友の会」へ入会することを検討してみてはいかがでしょう?
チケットの先行販売や会員限定の催しに参加出来る上に、入場料が2割引になる特典があります。会報も年6回送付してもらえます。入会金と年会費がかかります。
国立文楽劇場友の会

文楽劇場の施設情報とアクセス

施設情報

施設名/国立文楽劇場 
開館時間/10:00~18:00
住所/大阪市中央区日本橋1丁目12番10号
公演・劇場に関するお問い合わせ
06-6212-2531

アクセス(最寄り駅) 大阪メトロ千日前線、堺筋線日本橋駅、近鉄日本橋駅
7番出口より東へ徒歩1分。エレベーターを利用される方は10番出口のエレベーターがありますが、千日前通を挟んで反対側に出てきます。
駐車場はありませんので車の来場はおすすめしません。公共交通機関を利用しましょう。

フリーWi-Fiあり。車椅子対応トイレあり。コインロッカーあり。

国立文楽劇場公式ホームページ

劇場までのルート 各線日本橋駅から劇場まで


   
大阪メトロ日本橋駅を降りたら、7番出口のサインが出ています。左側に延びる通路の手前には大きな看板と矢印があります。


 
7番出口へ向かう通路の左側には薬局があります。まっすぐに伸びた通路を進んでください。


 
もし反対側のホームから改札を出ても、地下道をくぐって7番出口を目指しましょう。劇場の雰囲気が醸し出されているので安心です。


    
7番出口へ続く通路の左右には文楽の案内ポスターが貼られています。ぐんぐん歩いていくと、赤緑黒の縦縞が前方に近づいてきます。そこから左手を向くと7番出口へ続く階段が見えます。


      
7番出口は階段を上がります。 

登り切ったら、あとは直進するのみ。あと50メートルです。右手は千日前通で車が走っています。

手前はたこ焼き屋さん。その奥が文楽劇場です。カラフルなのぼり旗が立っているのが分かりますか?


 
のぼり旗には国立文楽劇場と書かれています。

正面入口は千日前通に面したこちらです。

正面入口から左手にエスカレーターがあり、2階が劇場入口になります。

まとめ

文楽鑑賞、何かのきっかけがないとなかなか触れるチャンスがないかも知れませんが、案外気楽に楽しめる庶民のための芸能です。
人形の動きを楽しむもよし、浄瑠璃の音を楽しむもよし、ストーリーの展開にひきこまれるのもよし、いろんな切り口から入って楽しむことができます。まだ実際の文楽を鑑賞したことが無い方は、臨場感を味わうためにも是非劇場へ。

ユネスコの世界文化遺産をお手軽な幕見席で鑑賞してみるのもひとつですよ。一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?