なんばで江戸時代の上方浮世絵(かみがたうきよえ)の魅力に触れる、上方浮世絵館

大阪千日前の法善寺・水掛不動尊(みずかけふどうそん)前に、世界で唯一上方(現在の京都付近・関西地方)の浮世絵を常設展示する美術館「上方浮世絵館(かみかだうきよえかん)」があります。上方の浮世絵は、歌舞伎芝居の役者たちを描いたものが多く、芝居街として名を馳せた道頓堀の芝居小屋を中心に上方で上演された舞台を、浮世絵を通して見ることができます。

この記事では、上方浮世絵の魅力から上方浮世絵館の見どころ、またアクセスや料金といった基本情報も詳しく紹介しています。
歴史が好きな方や大阪の観光スポットをお探しの方にもってこいの内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

上方浮世絵(かみかだうきよえ)とは?

上方浮世絵館

上方浮世絵とは、江戸時代後半から明治時代初期まで、おもに大坂で作られていた浮世絵版画で、美人画や風景画は少なく道頓堀の歌舞伎芝居を描いた役者絵がほとんどです。
今でいうブロマイドのようなもので、民衆の間で広まったこの時代の「民衆文化」を充分に感じられるものです。

また、江戸の役者絵で有名な歌川豊国(うたがわとよくに)や歌川国貞(うたがわくにさだ)らとは異なり、役者を美化せず、人間味を持って描く特徴があり、大阪の人情あふれる雰囲気を感じることもできます。

上方浮世絵館

B4サイズ(横257mm×縦364mm)

上方浮世絵館

B5サイズ(横182mm×縦257mm)

上方浮世絵は天保の改革(1843年~47年)の贅沢禁止令(庶民の娯楽を制限する制度)がでた際に浮世絵も対象になり、5年間ほど制作が中断されました。
天保の改革後に制作された上方浮世絵は、大判(B4サイズ、写真上)ではなく半分の中判(B5サイズ、写真下)にならざるを得なかったようです。
しかし、その小さくなった用紙でも、金・銀・銅粉などを使い今まで以上に緊張感を持たせ、また華やかに表現しようとした当時の職人の想いと共に時代背景が感じられる作品になっています。

また、浮世絵は「浮世絵版画」というように、「絵師」「彫り師」「刷り師」の共同作業で何人もの職人の手にかかり1枚の作品が生まれます。
作品を見てもわかるように、人物の表情や着物の模様、背景など細部までこだわっているところも魅力のひとつでしょう。

海外では「OSAKA PRINTS」として、イギリス・ロンドンにある大英博物館(だいえいはくぶつかん)をはじめ世界各地の美術館に収蔵されていて、世界でも「上方浮世絵」の名を残しているのがわかります。
西洋絵画の巨匠たちも日本の浮世絵に影響を受けており、印象派のゴッホは自身の浮世絵コレクションのなかに上方浮世絵も所有していたそうです。
ゴッホの有名な作品のなかには、もしかしたら上方浮世絵からインスピレーションを受けたものもあるかもしれませんね。

上方浮世絵館の見どころ

上方浮世絵館の想い

上方浮世絵館

上方浮世絵館は2001年4月に「この場所で上方浮世絵に触れ、ゆっくりした空間を味わってほしい」という館長の高野さんのこだわりでできた美術館です。
この場所は、道頓堀の芝居小屋がすぐ近くにあったことから上方浮世絵を飾るのにぴったりな場所だという理由も込めて建てられました。

外観の、印象的な猫ちゃんは「いらっしゃいませ」と招き猫をイメージしてつくられ、写真スポットとしても利用される方が多いそうです。

上方浮世絵館

上方浮世絵館

外観の上のほうにある「銀色のものは何だろう?」と、思われた方もいるのではないでしょうか。
これは高野館長のこだわりから生まれた「1粒のモミ」の彫刻です。
モミとは、写真のように稲穂の実の部分(脱穀してもみ殻を取り除いていない状態のもの)を指します。
1粒1粒のお米の大切さ、そしてくいだおれの街・大阪を彫刻で表現しているそうです。
また、このモミの彫刻がある前の道は、当時活躍していた芝居役者の人たちが歩いた「足跡(そくせき)」が残っている場所ともいわれていて、パワースポットとしても知られています。

上方浮世絵館

「老若男女問わず上方浮世絵に触れてほしい。そして、若い人たちがこの伝統的な文化に加えて新しい発想をたくさん生み出していってほしいです。上方浮世絵館はそういう場所でありたいです」と高野館長から力強い言葉をいただきました。

高野館長やスタッフさんを館内で見かけたときは、希望があれば上方浮世絵の歴史などのお話しを聞くこともできます。

館内の様子

上方浮世絵館

上方浮世絵館は4階建てになっており、1階は浮世絵にまつわるグッズを取り揃えたミュージアムショップ、2階~3階が展示室になっています。
4階はイベントフロアになっていて、浮世絵制作のほかスペースレンタルとしても使用されており、作品展なども開催されています。
高野館長のこだわりである、「ゆっくりしてほしい」という気持ちが各フロアから伝わってきますので、そういった外観・内装などのデザインを楽しむことができるのも見どころのひとつです。

上方浮世絵館

3階にはかわいい入口のお手洗いもあります。

上方浮世絵館

また、大阪に観光で来られた方などに嬉しい「お荷物お預かり」サービスがあるのもとても助かりますね。

上方浮世絵館

館内は嬉しいことに写真撮影がOKです。しかし、フラッシュは作品を傷つける原因にもなりますので、フラッシュ撮影はおやめください。

上方浮世絵館

もちろん、コロナ対策も徹底していますので、安心して館内を楽しむことができます。

どんな作品が見られるの?

上方浮世絵館

江戸時代後半の文化・文政期(19世紀前半)に、かつて道頓堀にあった芝居小屋「中座」や「角座」で上演されていた演目の役者絵を中心に収蔵されており、人気役者三代目中村歌右衛門(なかむらうたえもん)や七代目片岡仁左衛門(かたおかにざえもん)などの作品を見ることができます。
先ほども紹介した大判サイズ(B4)と中版サイズ(B5)も展示されていますので、時代の流れを感じることもできます。

上方浮世絵館

上方浮世絵館

また、作品の隣にはあらすじや解説をしてくれているキャプションもありますので、当時の歴史や様子も知ることができます。

上方浮世絵館

2階の展示室では3カ月に1度テーマ替え企画展示を開催していますので、上方浮世絵館を何度でも楽しむことができます。
2020年8月4日(火)~11月15日(日)まで「光沢の美」を企画展示していて、舞台上できらめく刀剣の表現や光沢によって浮き上がる衣装の文様などを見ることができます。

企画展示されていた過去の作品なども公式ホームページに詳しく紹介されていますので、ぜひ興味のある方はご覧くださいね。

上方浮世絵館

入口に入ったところには、どんっとゴッホと上方浮世絵館が表現された絵が飾られています。
上方浮世絵館の象徴である猫ちゃんやひまわり、役者そしてゴッホの肖像が描かれたこちらの絵は、もしもゴッホが上方浮世絵館を訪れていたならば、という想いが込められているそうです。

上方浮世絵をはじめ浮世絵を愛していたゴッホは、いつか日本を訪れたいという気持ちを持っていましたが、銃殺で自殺をはかり37歳でこの世を去ってしまいます。
現実には叶うことはありませんでしたが、絵画のなかでゴッホは上方浮世絵の魅力に触れることができるといった、高野館長の想いや芸術の素晴らしさがぎゅっとつまった作品です。

浮世絵制作が体験できる

上方浮世絵館

上方浮世絵館

上方浮世絵館では、4階イベントフロアで浮世絵制作体験ができます。
浮世絵は、「絵師」「彫り師」「刷り師」の共同作業によって完成し、こちらの制作体験では上方浮世絵館所蔵の版木による「刷り」の体験ができます。
実際に木版や和紙を使って制作することで、さらに浮世絵への理解を深めることができる貴重な時間を楽しめます。

上方浮世絵館

「刷り」の体験は初級、中級、上級と選べます。人数や難易度によっても異なりますので、公式ホームページで確認して、3日前までに予約することがベストです。
また、完成品は持ち帰ることができます。大阪に遊びに来られた際には観光プランのひとつとしてもおすすめですね。

上方浮世絵館公式ホームページ

こんな楽しみ方もできる

上方浮世絵館

上方浮世絵館

4階は道頓堀の芝居小屋の写真や衣装など、当時の時代を感じることができる場所でもあります。

上方浮世絵館

上方浮世絵館

「たぬき芝居(たぬきしばい)」「柴右衛門狸(しばえもんたぬき)」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
この言葉の通りで、実はたぬきと芝居役者はとても関わりが深かったようです。

淡路島の洲本市(すもとし)の裏山に住んでいた柴右衛門というとたぬきは、地元の人から愛されていました。
ある時、大阪の中座(当時の芝居小屋のひとつ)で大人気の芝居があると聞き、人間に化けて芝居を見に行ったところ、正体がばれてしまい殺されてしまいます。
柴右衛門の死後、中座では客の入りが悪くなったことで「柴右衛門を殺した祟りだ」という噂がたちはじめたので、柴右衛門を芝居小屋に祀ったところまた中座の客足が良くなったそうです。
以来、柴右衛門は芝居の神さまとして片岡仁左衛門、藤山寛美といった多くの役者たちから厚く信仰されていたようです。
中座に祀られていた「柴右衛門大明神」は2000年に淡路島洲本八幡神社に里帰りし祀られています。

上方浮世絵館の4階にもたぬきが大切に飾られています。
本棚にはたぬきの絵本もありますので、本を片手にゆっくりした時間を楽しむこともできますよ。

ミュージアムショップ

上方浮世絵館

上方浮世絵館の企画展示の図録(ずろく)やオリジナルをはじめ「日本の伝統を今へ」をコンセプトに厳選された和風小物・雑貨などがミュージアムショップで販売されています。

上方浮世絵館

上方浮世絵館

なかでも、浮世絵はがき・浮世絵しおり・祝い袋などのコーナーは人気です。浮世絵が手のひらサイズで楽しめる1点1点手作りされた和綴じ(わとじ)の豆本はお土産にも最適です。

また「手ぬぐい」も人気商品のひとつで上方浮世絵館オリジナルの手ぬぐいのほか、日本の伝統産業である絞り染め商品、さらに伊勢木綿の手ぬぐいでつくった「くびまき」もあります。
これらの商品は洗えば洗うほど柔らかくなり風合いが増してきますので、ちょっとしたプレゼントにも最適です。

美術館へ入館されない方でもミュージアムショップの利用は可能ですので、お土産やプレゼント選びに探しに入るのもおすすめです。

基本情報

入館料

一般/500円 小中学生/300円
・障がい者手帳をお持ちの方は300円(介護者1名様も同額とします)
※施設にエレベータ―がありません
・「ミュージアムぐるっとぱす・関西」、「スルッとKANSAI」の「大坂周遊パス」をお持ちの方は無料で入館できます。
・「関西・歌舞伎を愛する会」会員の方は特別料金で入館できます。
※ミュージアムショップのみのご利用には、入館料はいただきません。

アクセス

上方浮世絵館

1、各線なんば駅下車、なんばウォークB12出口をでます。

上方浮世絵館

2、そのまま少し進むと左手に「戎橋筋商店街」の入り口がでてきますので左折します。

上方浮世絵館

3、「戎橋筋商店街」を直進します。

上方浮世絵館

4、少し進むと右手に「カラオケ館なんば戎橋本店」が見えますので右折します。

上方浮世絵館

5、「法善寺水掛不動尊表参道」がでてきますので直進します。

上方浮世絵館

6、直進すると突き当たりに法善寺が見えますので、その左手前に「上方浮世絵館」があります。

施設詳細

施設名/上方浮世絵館(かみかだうきよえかん)
住所/大阪市中央区難波1-6-4
開館時間/11:00~18:00(入館は17:30)
休館日/月曜日(休日の場合は翌日)
お問い合わせ/06-6211-0303
上方浮世絵館公式ホームページ 

まとめ

なんばというとショッピングやグルメといったスポットが有名ですが、こうした文化芸術に触れることもできます。
上方浮世絵は、写実的で役者だけではなく歌舞伎の大道具や小道具もしっかりと描かれていますので、上方で上演されていた当時の舞台の様子まで楽しめるところも魅力的です。

今回私もはじめて上方浮世絵に触れましたが、とても充実した時間を過ごすことができました。
当時の文化や流行なども学ぶことができ、浮世絵の魅力についてより深めることができますので、なんばを訪れた際にはぜひお立ち寄りくださいね。

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