大阪・ミナミを流れる道頓堀川にある遊歩道、とんぼりリバーウォークで「道頓堀アートストリート」という新しいアートスポットが話題を呼んでいます。
そこでは「元気な大阪らしさ!!」というテーマで、アーティストたちがそれぞれの感性を生かして描いたミューラルアート(=壁画。ウォールアートとも)が多数展示されています。
今回は「道頓堀アートストリート」をスタートから手掛けたWALL SHARE株式会社の代表取締役である川添孝信さんに詳しくお話を聞いてきました。
ライブ感ある制作時の様子や、アーティストならではの視点、ウォールシェアについてなど、ご紹介しますのでぜひ最後まで読んでくださいね。
とんぼりリバーウォーク「道頓堀アートストリート」とは?
「道頓堀アートストリート」は、道頓堀川沿いにある遊歩道『とんぼりリバーウォーク』の管理運営を行う南海電気鉄道株式会社が、「とんぼりリバーウォークの新たな魅力とにぎわいを創出し、東西の回遊性向上につなげたい」という強い気持ちから始まった、新しいアートスポット。
フェンスに貼った幅5mの大きなパネルに、「元気な大阪らしさ!!」というテーマで、ペンキやスプレーで大阪にまつわるものや企業のプロモーションをアートで表現した絵が描かれています。
2019年7月、WALL SHARE株式会社(2020年4月に180(ワンエイティー)株式会社より移行)と南海電気鉄道株式会社が共催。両岸にある側壁パネルを活用し、広告を兼ねたアート作品の場にリニューアル、作品を見た人がSNSなどで拡散することで価値を創出し、高めていこうという「ウォールシェア」の考え方を初めて導入。
南海電気鉄道株式会社からの大きなバックアップのもと、企画から半年ほどの準備期間を経てスタートを切ることができました。
展示されている作品数は約20点。
現在も継続中の企画で、企業とコラボレーションした作品など期間限定のものもありますが、増えたり減ったりしながら35作品前後を目標に進められています。
とんぼりリバーウォークが、たくさんのパワフルなアートに彩られていく様はとても壮観です。
制作中の様子が見られる期間などはWALL SHARE株式会社のSNSで告知されますので、興味のある方はぜひチェックしてくださいね。
WALL SHARE twitter
制作時の様子
道頓堀川の遊歩道に幅約5mのパネルとペンキ、スプレーがズラリと並び、絵を描くアーティストたちの真剣な眼差しが窺えます。
ミューラルアートとは、街中の壁にペンキやスプレーを用いて描くアート作品のことで、グラフティ(落書き)をルーツに持つとも言われている表現方法の一つです。
5mの壁画に対して制作期間は約2〜5日。
アーティストが普段どのように絵を描いているのか、一般的には見ることのできない制作風景をその場で見られるというのは、とても貴重な体験です。
美術館やギャラリーで展示されている”完成した絵”を観るのとはまた違い、エネルギー溢れるライブ感を楽しめるのが魅力的。
歩いていた人が足を止めて見始めたり、直接アーティストと対話していたり、一緒に写真を撮っていたりと、コミュニーケーションやアクションが生まれる場にもなります。
作品が増えるたびに和歌山から見に来てくださるご年配の方もいらっしゃったとか。
とんぼりリバーウォークは車の通りも無いため安全に制作することができ、たくさんの人達と楽しい時間を過ごすことができたそうです。
多彩なアーティストたち
今回参加したアーティストたちは、美術に関して勉強した方やストリート出身の方、海外で活躍している方など様々。
WALL SHARE株式会社はアーティストの起用に一般公募などを設ることはせず、プロジェクト毎のコンセプトに応じてプロデュースを行い、アートのカルチャーや”繋がり”をとても大切にしています。
クライアントが求めることに対して、アーティスト自体の考え方や感性が企画と合うかを考えて声を掛けるようにしているそう。
とんぼりリバーウォーク「道頓堀アートストリート」でも、作品制作に入る前に南海電気鉄道株式会社とアーティストの描いたスケッチを共有してから始めましたが、アーティストの感性やテイストを生かしたいという想いを尊重してもらえ、修正などもなくのびのびと自由に制作することができました。
パブリックアートを描くアーティストの視点
パブリックアートとは、美術館やギャラリーに展示するのではなく、公共空間に設置される芸術作品のことを意味します。
WALL SHARE株式会社が展開するミューラルアートも同様で、建物の壁に絵を描くということは、その絵が多くの人の目に入るということ。
アーティストたちが常に持ち続けているのが、公共の場・公共物に絵を描くことによって景色をガラリと変えることに対する大きな責任感。
「この絵から色んな人にエネルギーを届けたい」「ポジティブな想いを持ってほしい」など、強い想いを込めて制作に挑みます。
壁に絵を描くアーティストたちの大きな特徴は、街全体をアートとして見る広大な視点。
この街にはどんな人が住んでいて、この道はどんな人が歩いていて、このビルはどんな色をしていて、建物の隙間からはどんな空模様が見えるのか。
様々なことを考慮した上で街の雰囲気になじむ作品を作り上げていきます。
「この街にアートを残したらどんなインパクトを残せるだろう」
室内に絵を飾るのではなく、外の建物である壁に直接「絵」を描くことの意味。
街全体をアートに染め上げ、本質的な壁画を残していくことにこだわりを持ち、追求していくカッコイイ人達。
それが壁に絵を描くアーティストたちです。
ミューラルアートを広めたいという想いと今後の展望
ミューラルのプロデュース事業を行うWALL SHARE株式会社。ミューラルを活用した企業のプロモーションや、まちづくりなどを行います。
代表取締役社長である川添さんに、日本のアート市場についてや、ミューラルを広めたいという想いについて、詳しくお聞きしてきました。
「WALL SHAREを設立しようと思ったきっかけは僕自身10代の時からストリートアート(ミューラルもストリートアートの一種)のカルチャーに興味があったことです。
当時は学生で一緒に楽しめる人が少なかったのですが、社会人になり友達と海外へ旅行をする中で、海外ではストリートアートを楽しむ姿が多くみられました。
そこで『日本でも広まったら面白そう』その思いが原点です。
何が出来るか探る中で日本のアート市場は世界に比べるとすごく小さいという事実を知り、まずはまちにアートを増やして、子どもから大人までアートに気軽に触れるきっかけを作ることができれば良いのではないか?それが結果的に、アート市場への貢献にもつながると思いました。
僕たちがミューラルのプロジェクトを実施する時に大切にしているのは、例えば企業のプロモーションとは言え”アーティストの感性を生かして寄り添いたい”という気持ちです。
アーティストの想いやスキルがアートに反映された上での、企業とアーティストのコラボ作品を目指し、カルチャーを大切にしたプロモーションを目指します。
結果として、日本でもアートを大切にする流れのきっかけになると嬉しいです。
街なかにアートがあることで、子供から大人まで気軽に触れることができます。
ウォールアートを見て、アーティストのことを知りたくなったり、美術館に行ってみようと思えるようなきっかけ作りをしていきたいです。
子どもの頃からアートが身近にあるということは、豊かな心を育んでいくためにとても必要なことだと思っています。
アートに触れて育つ子が増えれば、その子たちが大きくなった時にアート好きの日本になるのではないかと、長期的な目標として持っています。
幼い子どもたちが素直な気持ちで描く絵というのは、何にもしばられることなくのびのびとしていて自由です。
その年齢でしか描けないむじゃきな感性で描かれた絵を集めて、展示会なんかができたら、一体どんな光景が広がっていくのか。
そういった活動もやっていきたいと考えている最中です。
色んな人に自分が描いた絵を見てもらえる貴重な体験が、その子にとって何かのきっかけになってほしいと思います。
全国のどこででも、街じゅうにアートが広がっているという状況を作っていきたいです。」
笑顔で熱く語ってくださった川添さんの描く「日本中にアートが広がる景色」。
素晴らしい光景を見られる日が、待ち遠しいですね。
WALL SHARE株式会社のこれからの活躍に、期待が高まります。
WALL SHARE株式会社公式ホームページ
まとめ
今回は、大阪・なんばの道頓堀にある、とんぼりリバーウォーク「道頓堀アートストリート 」についてご紹介しました。
川沿いにズラリと並ぶ個性豊かでエネルギッシュな作品の数々からは活気が満ち溢れています。
制作期間に行くと、アーティストたちの制作風景が見れたり、話すことができたりと、楽しい時間を過ごせるのも魅力的です。
これからもどんどん増えていく作品たちを見に、皆様もぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
猫とおいしいものをこよなく愛する、大阪出身・在住の食いしん坊ライター。
肌で感じた大阪ミナミならではの魅力や発見、お役立ち情報をわかりやすくお届けしていきます!