あなたの台所にはこだわりの調理器具や料理道具はありますか?プロの料理人や飲食店を経営している方はもちろんですが、一般の家庭でもこれだけはこだわりたい!といった調理道具がひとつはあるのではないでしょうか。
江戸時代に天下の台所とも言われ、現代も食文化くいだおれの街としても有名な大阪ミナミには「飲食店を始めるなら道具筋に行けばすべて揃う!」とも言われることで有名な千日前道具屋筋商店街があります。
最近では飲食店の経営者やプロの料理人だけでなく、一般の方や観光客も多く見かけるようになり、観光地としても人気です。
この記事では料理に関するプロの技をあらゆる角度で体験しながら、千日前道具屋筋商店街の魅力に迫ります。
プロ御用達の千日前道具屋筋商店街
なんば駅からほど近い千日前道具屋筋商店街は、料理道具・厨房道具のすべてが揃う専門店が軒を連ねるプロ御用達の商店街です。
大阪は「天下の台所」「くいだおれの街」としても有名ですので、食に携わる料理人の目利きにかなったあらゆる道具を揃える店がいくつも集まっています。
業務用の厨房器具や什器(じゅうき)、職人技が光る包丁といった料理道具はもちろんのこと、入口にある看板やのれん、提灯や食品サンプルだけでなく、食器やユニフォームなど飲食店を営業するにあたって必要なものをすべて揃えることができるほどの商品の充実ぶりはまさに圧巻の光景です。
お店で見かけるたこ焼き器やお好み焼きのヘラなど、専門店ならではの品揃えに楽しくなってついつい見とれてしまいます。
最近では一般の方でも購入しやすいような少数単位での販売(いわゆるばら売り)をおこなっている店舗が多くなったこともあり、大阪を代表する観光地としても有名です。
一方で品質の高いメイドインジャパンの調理道具が揃っていることがSNSや口コミで広がり、海外からわざわざ購入に訪れるといったケースも珍しくありません。
千日前道具屋筋商店街の歴史
もとは明治15年(1882年)、法善寺の千日前から四天王寺のお大師さんや、十日戎で有名な今宮戎神社への参道として、古道具屋や雑貨商が立ち並んだことが始まりとされています。
大正時代になり数件しかなかった小道具屋が20軒に増え、問屋・製造業の専門店としての道を歩み始め、いつしか商店街へと発展していきました。
昭和になりミナミの急成長と共に道具屋筋も発展しましたが、太平洋戦争が始まると生活は危機的状況に陥り、昭和20年(1945年)の大阪大空襲で焼け野原となってしまったため、バラック小屋を建てて生活を再建していきました。
戦後は商店街として再スタート、次第に昔の活気を取り戻すことで徐々に店舗も整備され、
昭和45年(1970年)には全長150mの商店街へと発展を遂げました。
そして平成8年(1996年)に屋根付きのアーケードに建て替えられた際、商店街入口の目印となる「道」の看板が取り付けられ現在の商店街となったのです。
プロの技から生まれた商店街統一ブランド「絆具(つなぐ)」
そんな歴史ある道具屋筋商店街が、本物を追求するオリジナルブランド「絆具(つなぐ)」を2018年に立ち上げ、日本の食文化を未来につなぐことを目的に展開しています。
人と道具が築きあげてきた大切な食文化を未来につなげたい、そんな思いが込められた絆具ブランドには道具へのいくつもの思いやこだわりが垣間見えますが、今回はその中で3つのブランドをご紹介します。
冷香(れいこう)
他にはないオリジナルデザインのタンブラーを作りたい。そんな想いが一致した道具屋筋商店街の老舗である千田硝子食器さんと、大阪の伝統工芸品に認定されている大阪錫器さんがコラボして実現できた絆具ブランドの第3弾となる商品。
錫を使った素材でワイングラスのようなデザインを作りたいという発想から生まれたそうですが、口が小さく底が広い形を実現するためには技術的に難しく、1つの金型から作ることが不可能でした。そこで器の上半分と下半分を別々の金型から作成して、それらを溶接でつなげることで実現、制作には約半年を要したそうです。
完成品を見る限りでは溶接などの作業工程が想像できないほど美しく、女性にも気軽に利用できるよう錫を使った素材でありながら極限まで軽量化された器ははまさに職人の技。
また冷香には艶あり(本来の素材)と艶消し(表面を研磨してさらに加工)の2タイプがあり、デザインだけでなく口当たりの違いも楽しめるのでセットで揃えたくなる器です。
燗銅壺(かんどうこ)
燗銅壺とは、飲食店でよく見かける日本酒などの熱燗をつくるための道具であり、銅でできた筒状の部分に水を入れて、熱して適温になったところにとっくりを入れて湯せんします。
商品としては現代も存在していますが、昔ながらの素材(銅)を使用した本来の燗銅壺を作れる職人がいなくなったことに危機感から、本来の良い部分は残しつつ現代に合わせた新しい燗銅壺を作りたいという発想から生まれた絆具ブランド第2弾商品。
銅は熱伝導が良いため炭火でも沸きが早いことが特徴であり、ステンレス製では実現できないまさにこだわりの商品。
千日前道具屋筋商店街公式ホームページ「燗銅壺」
砲金鍋(ほうきんなべ)
昔の天ぷら屋さんでは砲金鍋を使って天ぷらを揚げるのが主流だったそうですが、メーカーの廃業や採算の問題などで砲金鍋は製造されなくなり、現在では利用されることがなくなったしまったことから、もう一度現代に砲金鍋を復活させようと始まった絆具ブランドの第4弾となる商品。
砲金とは銅90%、錫(すず)や鉛を10%を使用した合金のことですが、環境に配慮してわずかに入っている鉛を一切使わない、鉛レスの砲金鍋という点では現代風にアレンジされています。
お手入れの際は拭いた後に磨くなど一般的な鍋と比べてメンテナンスに手間はかかりますが、砲金鍋だからこそできる油の温度調整など天ぷらの魅力をさらに引き出してくれるアイテムなのです。
取扱店舗
絆具ブランド公式サイト
冷香:千田硝子食器株式会社
燗銅壺/砲金鍋:株式会社和田厨房道具
プロの技を実際に体験できる
グラスアート体験
硝子食器の専門店では4つのプラン(手軽に始められるコースから本格的なデザインや絵付けなど)から選べるグラスアートを体験することができます。
簡単なのに本格的なオリジナルグラスが作れる「まんぞくコース」では、用意された7種類以上のグラスから1つを選び、100種類以上のシールをグラスに貼っていき、グラスのデザインが完成した後は、サンドブラストと呼ばれる機械を使って仕上げていきます。
サンドブラストとは、特殊な砂をグラスに噴射して研磨することで彫刻加工する工法のことであり、専用のマシンを使うことでシールを貼った以外の部分が研磨されるので、元々の素材の部分と研磨した部分に差が生じることとなります。
最後にシールを剥がすとその形がデザインとなっており、約1時間程でグラスアートが完成します。
完成したグラスは持ち帰ることができるので、世界にひとつしかないオリジナルのマイグラスとして子供から大人まで楽しめることもあり、家族そろって参加できる人気の体験教室となっています。
食品サンプル制作体験
食品サンプルの制作・販売を行っている専門店では、飲食店に展示されている本物そっくりな食品サンプルを実際に制作しているといった体験イベントを実施しています。
(※新型コロナウイルスの感染拡大防止の為、体験イベントは当面受付を停止しています)
最近ではより手軽に体験できるように、部品や塗料などがすべて揃った制作キットが販売されています。
大阪のたこ焼きや江戸前寿司といったラインナップが用意されており、メニューによって難易度が異なる点もサンプル制作の楽しみのひとつ。
特にお寿司のシャリは形を整えるのにテクニックが求められるそうなので、まずは入門としてたこ焼き、その後少し難易度を上げてお寿司にチャレンジしてみるといった楽しみ方もできますよ。
キットの中には説明書も同封されており、また制作工程を動画で視聴することもできるので初めてでも安心で制作することができる親切設計となっています。
https://www.youtube.com/watch?v=LEVllnZ3DD0
https://www.youtube.com/watch?v=ELZdpNrhZqI
完成した食品サンプルはキーホルダーやマグネットとしても利用できるので、目で見て楽しむだけでなく実用品としても面白アイテムとしてきっと注目の的になることでしょう!
今後は47都道府県のご当地名物としてシリーズ化を計画しているそうなので、お土産にも喜ばれること間違いなしです。
アクセス
①なんば高島屋の北側にあるなんさん通りの交差点をわたり、なんば南海通りに入ります。
②直進して1つ目の交差点を右折します。
③なんばグランド花月(NGK)の前を直進した先が千日前道具屋筋商店街です。
アクセス方法を動画でご紹介
まとめ
飲食店やプロの料理人たちの御用達の千日前道具屋筋商店街ですが、一般の方でも気軽に購入や制作体験ができることをご紹介しました。
他にもお正月には「新春道具市」、道具の日である10月9日には「道具屋筋まつり」という一般向けのイベントが開催されており、アウトレット販売や抽選会、掘り出し物を集めての大売出しやギネスに認定された世界最大のたい焼きを作っての試食会など、地元大阪だけでなく国内外の観光客にも親しまれています。
(※新型コロナウイルスの感染拡大防止の為、各種イベントの開催状況については事前にご確認ください)
商店街に1日いても飽きないほど、商いが詰まった商店街にぜひ足を運んでみてください!
千日前道具屋筋商店街
公式ホームページ
公式Facebook
公式Instagram
【取材協力】
千田硝子食器株式会社
株式会社和田厨房道具
株式会社デザインポケット
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関西を拠点に取材ライターとして活動中。
イベント取材やお店の魅力を紹介したり、コラム記事を書いたり。
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